F0177 美しいルビー0.95ct 天然絶品ダイヤモンド0.09ct 最高級Pt900無垢リング サイズ12号 重量7.4g 縦幅6.2mm

F0177 美しいルビー0.95ct 天然絶品ダイヤモンド0.09ct 最高級Pt900無垢リング サイズ12号 重量7.4g 縦幅6.2mm 收藏

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https://youtu.be/xXA5StMti8c?si=ckfcSvawViWkaXNn

### 深紅のコンパス **序章:果たされなかった約束** 橘紗江子、五十二歳。その指に嵌められた一台の指輪が、彼女の世界のすべてだった。 プラチナの滑らかな曲線が、指を優しく包み込む。その中央に鎮座するのは、息を呑むほどに深く、燃えるような赤色を宿したオーバルカットのルビー。両脇には、清冽な光を放つダイヤモンドが、まるでルビーを守る騎士のように慎ましく並んでいる。夫・雅彦が遺した、たった一枚のデザイン画から生まれた指輪。彼が「結婚三十周年の記念に」と、その日を夢見て描いた、幻の贈り物だった。 三十周年を祝うことは、叶わなかった。十年前、雅彦は病という静かな嵐に連れ去られた。紗江子の時間は、あの日からずっと、厚い灰色の雲に覆われているようだった。一人息子の健太は独立し、今では家庭を持っている。経理部の課長という肩書は、紗江子に社会的な居場所と責任を与えてくれたが、デスクの数字を追いかける毎日が、心の空洞を埋めてくれることはなかった。 五十二回目の誕生日。健太の家族は、連休を利用して旅行に出かけていた。「おめでとう」というメッセージアプリの通知が、静まり返ったリビングに虚しく響く。紗江子は一人、グラスに注いだワインを傾けながら、窓の外に広がる都会の夜景をぼんやりと眺めていた。きらびやかな光の海は、彼女の孤独を浮き彫りにするだけだった。 ふと、書斎の棚に仕舞い込んだままの、雅彦の遺品が入った箱を思い出した。何かに導かれるように立ち上がり、埃をかぶった木箱を開ける。中には、使い古された万年筆、趣味だったカメラ、そして、黄ばみ始めたスケッチブックが数冊。その一冊を手に取り、ページをめくっていく。そこに描かれているのは、家具のスケッチ、風景画、そして、見慣れた指輪のデザイン画だった。 鉛筆で描かれた繊細な線。添えられた小さな文字で「Saekoへ。情熱と、変わらぬ愛を込めて」と記されている。雅彦の優しい声が、耳元で甦るようだった。 「雅彦さん……」 こらえきれず、涙が頬を伝う。左手の薬指で輝くルビーの指輪を、右手の指先でそっと撫でた。この指輪は、彼が亡くなって五年が経った頃、ようやく作る決心がついたものだ。寂しさを紛らわすため、彼の愛情を形にして側に置きたかった。だが、完成した指輪を指に嵌めた瞬間、紗江子を襲ったのは慰めではなく、激しい後悔の念だった。 もっと、彼と話をしておけばよかった。 もっと、彼の夢を応援してあげればよかった。 もっと、「愛している」と伝えておけばよかった。 後悔は、寄せては返す波のように、十年という歳月をかけて紗江子の心を静かに侵食していた。 「もし、もしもあの頃に戻れたら……。あなたを、もっと幸せにしてあげられたのに」 嗚咽が漏れる。涙で滲む視界の中で、指輪のルビーが、まるで心臓の鼓動に呼応するかのように、脈打つような強い光を放ち始めた。深紅の石の奥底から、眩いほどの閃光が溢れ出す。世界がぐにゃりと歪み、耳鳴りが思考を掻き乱す。紗江子は、抗えない力に引きずり込まれるように、意識を手放した。 --- **第一部:過去への戸惑い** 冷たいアスファルトの感触で、紗江子は意識を取り戻した。鼻を突くのは、排気ガスと埃の混じった、懐かしい匂い。目を開けると、視界に飛び込んできたのは、見慣れたオフィスビルのエントランスだった。だが、何かが違う。建物の壁は新しく、植え込みの木々はまだ若々しい。そして、行き交う人々の服装が、明らかに時代がかっていた。ゆったりとしたシルエットのスーツを着た男性、肩パッドの入ったジャケットを羽織った女性。 「……ここは?」 混乱する紗江子の耳に、弾むような声が届いた。 「紗江子! ぼーっとしてどうしたの? 遅刻しちゃうよ!」 振り返ると、そこに立っていたのは、信じられない人物だった。大きな瞳を輝かせ、快活な笑顔を浮かべている。柏木涼子。二十代の頃、誰よりも仲の良かった同期で、親友。そして、恋のライバルでもあった。しかし、目の前にいる彼女は、紗江子の記憶にある四十代の姿ではなく、肌のはちきれそうな、若さに満ちた二十四歳の涼子そのものだった。 「涼子……?」 「何よ、改まって。さ、行こ!」 涼子に腕を引かれ、なされるがままにビルの中へ入る。エレベーターの鏡に映った自分の姿を見て、紗江子は息を呑んだ。そこにいたのは、白髪の混じり始めた髪をきっちりとまとめ、目元に疲れを滲ませた五十二歳の女ではない。艶やかな黒髪を揺らし、リクルートスーツに身を包んだ、二十四歳の自分。しかし、その瞳の奥には、五十二年分の歳月を生きた女の戸惑いと絶望が色濃く浮かんでいた。 ここは、過去だ。 自分が新入社員として入社した、あの頃の世界。 オフィスフロアに足を踏み入れた瞬間、紗江子の心臓は大きく跳ねた。そこに、彼がいたからだ。 橘雅彦。 一つ年上の先輩だった彼は、同僚と楽しそうに談笑していた。少し癖のある髪、いたずらっぽく細められた目、日に焼けた健康的な肌。紗江子の記憶の奥底に封じ込めていた、若き日の夫の姿が、鮮やかにそこにあった。彼が笑うたびに、胸が締め付けられるように痛む。あと三十年もしないうちに、その笑顔が永遠に失われることを、この世界の誰も知らない。自分以外は。 「おはよー、橘先輩!」 涼子が明るく声をかけると、雅彦は「おう、柏木! おはよう」と快活に返した。その視線が、涼子の隣にいる紗江子に向けられる。 「桜井も、おはよう」 桜井。そう、結婚前の自分の名字だ。紗江子は声を発することができず、ただ小さく頷くことしかできなかった。雅彦の何気ない一瞥が、鋭い刃のように心を貫く。彼はまだ、自分のことを「大勢いる後輩の一人」としか認識していない。 自分のデスクにたどり着き、椅子に崩れるように座った。頭が真っ白だった。これは夢なのか。それとも、罰なのだろうか。一番幸せだったけれど、一番後悔の多い時代に、なぜ自分は戻ってきてしまったのか。 指に目を落とす。そこには、あのルビーの指輪はなかった。代わりに、大学の卒業記念に自分で買った、華奢なピンキーリングが嵌まっているだけだった。だが、指輪を嵌めていた左手の薬指の感触は、確かに残っている。あの重み、プラチナの冷たさ、ルビーの存在感。あれだけが、自分が未来から来たという唯一の証だった。 「桜井さん、これ、昨日の資料のコピーお願いできる?」 「桜井さん、部長がお呼びだよ」 次々と浴びせられる指示に、紗江子は必死で対応した。幸い、二十年以上も前の業務内容だったが、身体が覚えていた。パソコンはまだ旧式のデスクトップで、インターネットも普及し始めたばかり。社内の連絡は、内線電話か手書きのメモが主流だ。何もかもが懐かしく、そして切なかった。 昼休み、紗江子は涼子に誘われて社員食堂に向かった。 「ねぇ、紗江子。今日の橘先輩、見た? 新しいスーツ、すっごく似合ってたよね!」 涼子は目を輝かせながら、雅彦の話を切り出した。 「やっぱり、かっこいいなぁ……」 「……そうね」 「何よ、その気のない返事! 紗江子だって、橘先輩のこと、気になってるくせに」 図星だった。当時の自分は、涼子と同じように雅彦に憧れていた。だが、奥手な性格が災いし、遠くから見つめることしかできなかった。 「私、今度の飲み会で、思い切ってアタックしてみようかな」 涼子の言葉に、紗江子の心に黒い染みが広がった。嫉妬。忘れていた、醜い感情だった。未来を知っている自分は、涼子の恋が実らないことを知っている。最終的に雅彦は自分を選ぶ。だが、その過程で、自分たちはどれだけ悩み、傷つけ合っただろうか。 涼子には幸せになってほしい。心からそう思う。しかし、雅彦を譲ることなど、到底できなかった。彼は自分の夫なのだから。いや、まだ夫ではない。この世界の彼は、誰のものでもない。 食堂の片隅で、雅彦が同期の男性と食事をしているのが見えた。彼は大きな口で唐揚げ定食を頬張りながら、仕事の愚痴をこぼしているようだった。そのあまりにも日常的な光景が、紗江子の胸を締め付ける。生前の彼は、病室のベッドの上で、流動食しか口にできなかった。あんな風に、美味しそうにご飯を食べる姿を見ることさえ、叶わなかった。 涙が込み上げてくるのを、必死で堪える。 自分は、何のためにここに来たのだろう。 ただ、過去の幸せな光景を、指をくわえて見ているだけなのか。 それとも、何かを変えることができるのだろうか。 もし、未来を変えられるとしたら。雅彦が病気にならない未来を、作り出すことができるのだろうか。彼の健康にもっと気を配り、定期健診を欠かさず受けさせ、ストレスの少ない生活を送らせてあげれば……。 淡い希望が、紗江子の心に芽生え始めた。そうだ、自分は彼を救うために来たのかもしれない。彼が長生きし、健太の成長を見守り、孫の顔を見ることができる未来。そして、二人で三十周年の記念に、あのルビーの指輪を買いに行く未来。 そのためには、まず、若き日の自分が雅彦と結ばれなければならない。涼子に先を越されるわけにはいかなかった。 「涼子、ごめん。私、やっぱり橘先輩のことが……好きみたい」 紗江子は、意を決して親友に告げた。涼子の瞳が、驚きに見開かれる。 「……やっぱりね。知ってたよ」 彼女は一瞬寂しそうな顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。 「じゃあ、ライバルだね。正々堂々、勝負しよう!」 涼子の潔い言葉に、紗江子は胸が痛んだ。この勝負の結末を、自分はすでに知っている。これは、あまりにも不公平なゲームだった。 その日の午後、紗江子は自分の存在について奇妙な事実に気づいた。この世界には、「二十四歳の桜井紗江子」が確かに存在し、デスクで仕事をしている。そして、自分は、「五十二歳の橘紗江子」の記憶を持ったまま、その身体を動かしている。周囲の人間は、誰もそのことに気づいていない。あたかも、最初から「中身」だけが入れ替わったかのように。 ならば、自分は「桜井紗江子」として、もう一度人生をやり直すことができるのかもしれない。雅彦を救い、今度こそ後悔のない人生を送るために。 決意を固めた紗江子の目に、強い光が宿った。 しかし、彼女はまだ知らなかった。運命の歯車に手を加えることが、どれほど複雑で、痛みを伴う結果を招くことになるのかを。 --- **第二部:歪んだ介入と深まる絆** 過去の世界で生きることを決意した紗江子は、まず行動を起こした。未来の知識と、五十二年分の人生経験を武器に、若い自分と雅彦の距離を縮めようと画策したのだ。 当時の自分は、仕事は真面目にこなすものの、どこか要領が悪く、自分の意見をはっきり言えない性格だった。紗江子はそれを変えようとした。会議では、未来で培った論理的な思考を活かして的確な発言をし、上司である遠藤課長を唸らせた。難解なデータ分析も、Excelの高度な関数を知っている紗江子にとっては朝飯前だった。 「桜井、最近どうしたんだ? 急に仕事ができるようになったじゃないか」 皮肉屋の遠藤に褒められたことで、紗江子は社内で少しずつ注目されるようになった。それは、雅彦の気を引くための、計算された行動だった。 狙いは的中した。雅彦が紗江子に話しかけてくる機会が、明らかに増えた。 「桜井さん、さっきの会議での発言、すごかったな。俺、全然あそこまで考えが及ばなかったよ」 「いえ、そんな……」 「今度、企画書のことで相談に乗ってくれないかな?」 雅彦からの誘いに、紗江子の心は高鳴った。若い頃の自分なら、ここで舞い上がってしまい、ろくな返事もできなかっただろう。しかし、今の紗江子は違う。落ち着いた態度で、「ええ、喜んで。橘先輩の企画、いつも面白いから楽しみです」と微笑んでみせた。その大人の余裕が、雅彦には新鮮に映ったようだった。 一方で、紗江子は親友である涼子との間に、見えない壁ができていくのを感じていた。涼子は持ち前の明るさと積極性で雅彦にアプローチを続けていたが、雅彦が仕事のことで頼りにするのは、明らかに紗江子の方だった。 「紗江子って、なんだか最近、変わったよね。すごく……大人っぽくなったっていうか、遠い人になったみたい」 ある日の帰り道、涼子が寂しそうに呟いた。 「そんなことないよ。私は私だよ」 「……橘先輩、紗江子のことばっかり見てる。私、もうダメかも」 弱音を吐く涼子に、紗江子はかける言葉が見つからなかった。罪悪感が胸を刺す。親友から、大切な人を奪おうとしている。その事実に、心が軋んだ。 紗江子の介入は、恋愛関係だけに留まらなかった。彼女の最大の目的は、雅彦を病から救うこと。生前の彼は、仕事のストレスから不規則な生活を続け、健康を害していった。紗江子は、そうなる前に彼の生活習慣を改善させようと考えた。 「橘先輩、最近顔色が悪いですよ。ちゃんと眠れてますか?」 「先輩、お昼、外食ばっかりじゃ身体に悪いですよ。これ、よかったら」 紗江子は、毎朝早く起きて、栄養バランスを考えた弁当を二つ作った。一つは自分のもの。もう一つは、「作りすぎちゃったので」という口実で、雅彦に渡した。 最初は戸惑っていた雅彦も、紗江子の手料理の美味しさと、彼女の細やかな気遣いに、次第に心を開いていった。 「桜井さんの弁当、めちゃくちゃ美味いな。おふくろの味って感じがする」 その言葉に、紗江子は胸が詰まった。「おふくろの味」ではない。それは、三十年間、あなたが食べ続けた「妻の味」なのだ。 二人の距離が縮まるにつれ、紗江子は雅彦の知らなかった一面を知ることになる。ある夜、残業をしていた二人は、休憩室で缶コーヒーを飲みながら話していた。 「……実は、親父と喧嘩しててさ」 雅彦が、ぽつりと漏らした。 「うち、親父が会社を経営してるんだけど、俺に跡を継げってうるさいんだ。でも、俺はデザイナーになりたい。この会社に入ったのも、商品開発部でデザインの仕事がしたかったからなんだ」 紗江子は衝撃を受けた。生前の雅彦は、父親との関係について多くを語らなかった。彼がそんな葛藤を抱えていたなんて、全く知らなかった。妻であった自分にさえ、本当の苦しみを打ち明けてはいなかったのだ。 「デザイナー……素敵な夢ですね」 「でも、親父は猛反対でさ。『お前にそんな才能はない』って。昔から、何一つ褒めてくれたことがない人なんだ」 俯く雅彦の横顔は、いつも見せる快活さの欠片もなく、ひどく傷つき、脆く見えた。 紗江子は、たまらない気持ちになった。彼がどれほどの重圧の中で、夢を追いかけていたのか。自分は、そんな彼の苦悩に、気づいてあげられていただろうか。仕事の忙しさを理由に、彼の心の声を聞き逃してはいなかっただろうか。 「そんなことありません」 紗江子は、強い口調で言った。 「橘先輩には、才能があります。あなたの企画書は、いつも独創的で、人の心を惹きつける力がある。それは、デザイナーにとって一番大切な才能です。私、保証します」 五十二歳の自分が、夫の才能を、誰よりも信じている。その確信が、言葉に力を与えた。 雅彦は、驚いたように顔を上げた。彼の瞳が、潤んでいるように見えた。 「桜井さん……。ありがとう。そんな風に言ってくれたの、君が初めてだよ」 雅彦は、紗江子に全幅の信頼を寄せるようになった。彼は紗江子を、単なる仕事のできる後輩としてではなく、自分の夢を唯一理解してくれる、特別な存在として見るようになった。 だが、紗江子の介入は、予期せぬ歪みを生み出していた。 ある日、若い紗江子(つまり、紗江子の身体)と雅彦が親密に話しているのを見た涼子が、紗江子を問い詰めた。 「紗江子、ずるいよ。いつの間に、橘先輩とあんなに仲良くなったの? 私が先輩のこと好きだって知ってるのに!」 「違うの、涼子、これは……」 「もういい! 紗江子なんて、友達だと思ってたのに……裏切り者!」 涼子は、泣きながら走り去ってしまった。紗江子は、その場に立ち尽くすことしかできなかった。親友を傷つけてしまった。雅彦を手に入れるために、一番大切な友情を壊してしまったのだ。 さらに、事態は思わぬ方向に転がり始める。 紗江子の仕事ぶりと、雅彦への影響力を目の当たりにした上司の遠藤が、二人をある大きなプロジェクトの主要メンバーに抜擢したのだ。それは、会社の命運を左右する新商品の開発プロジェクトだった。 雅彦は、デザインの責任者として、寝る間も惜しんで仕事に打ち込んだ。紗江子は、彼のサポート役として、マーケティング分析や資料作成を担当した。二人は、公私ともに、なくてはならないパートナーとなっていった。 しかし、紗江子は気づいていなかった。自分が雅彦の夢を後押しすればするほど、彼が父親と対立し、より大きなストレスを抱えることになるということに。そして、その過酷な仕事環境こそが、未来で彼の身体を蝕んだ元凶の一つであったということに。 雅彦を救うための行動が、皮肉にも彼を追い詰める結果を招いていた。 紗江子は、自分が良かれと思って書き換えた過去が、微妙に、しかし確実に、元の歴史とは違う流れを生み出していることに、まだ気づいていなかった。彼女は、複雑に絡み合った人間関係の糸の中で、自分が「異物」として、その結び目をさらに固く、解き難いものにしてしまっていることを、まだ知らなかったのである。 --- **第三部:真実の愛と受容** プロジェクトは佳境に入っていた。雅彦が寝食を忘れて打ち込んだデザインは、役員たちの間でも高い評価を得ていた。だが、彼の表情は日に日に険しくなり、目の下の隈は色濃くなるばかりだった。紗江子が持っていく手製の弁当にも、ほとんど手をつけない日が増えた。 「雅彦さん、無理しないで」 いつものように「橘先輩」と呼ぶのがもどかしく、紗江子は思わず未来で呼んでいた名前で呼びかけた。 「……大丈夫だよ、桜井さん。今が頑張り時なんだ」 雅彦は力なく笑うが、その笑顔が痛々しいほどに紗江子の胸を抉った。 そして、運命の日が訪れる。 最終プレゼンテーションを数日後に控えた金曜日の午後、雅彦の父親が、怒鳴り込むようにして会社に現れた。応接室に通された雅彦と、同席を求められた遠藤課長、そして紗江子。厳格な顔つきの初老の男性は、挨拶もそこそこに、雅彦を怒鳴りつけた。 「雅彦! いい加減にしろ! こんなくだらないお絵描きは今日で終わりだ。来週から、私の会社で働け!」 「嫌だと言ったはずだ、親父! 俺はデザイナーになるんだ!」 「お前のような半端者に何ができる! お前のデザインが採用されたところで、この会社にどれだけの利益をもたらすというのだ。商売を舐めるな!」 父親の言葉は、刃物のように雅彦のプライドを切り裂いた。彼は唇を噛み締め、悔しさに拳を握りしめている。 「橘社長」と、遠藤が冷静な声で割って入った。「息子さんのデザインは、実に素晴らしい。このプロジェクトは、必ず成功します。彼の才能を、どうか信じてやっていただけませんか」 「黙れ! 部外者は口を出すな!」 父親は聞く耳を持たず、一枚の書類をテーブルに叩きつけた。 「これは、お前の縁談相手の資料だ。この週末、先方と会うことになっている。会社の跡継ぎとして、身を固めるのがお前の役目だ」 「……結婚だと?」 雅彦は、信じられないという顔で父親を見つめた。 「勝手に決めるな! 俺には……俺には、好きな人がいるんだ!」 その瞬間、雅彦の視線が、真っ直ぐに紗江子を捉えた。紗江子の心臓が、大きく音を立てて跳ねる。彼の瞳は、助けを求めるように揺れていた。 父親は、紗江子を値踏みするように一瞥すると、鼻で笑った。 「こんな小娘か。くだらん。いいか雅彦、週末までに身の振り方を決めろ。さもなければ、このプロジェクトごと潰してやる。私には、そのくらいの力がある」 嵐のように父親が去った後、応接室には重い沈黙が流れた。 雅彦は、椅子に深く沈み込み、顔を覆った。彼の肩が、小さく震えている。 「……ごめん。見苦しいところを見せた」 「雅彦さん……」 紗江子は、どうしようもない無力感に襲われた。彼を励まし、才能を信じていると伝えてきた。その結果、彼は父親と正面から衝突し、人生最大の岐路に立たされている。良かれと思ってしたことが、彼を絶望の淵に追いやってしまった。 その夜、紗江子は一人、公園のベンチに座って泣いていた。涼子を傷つけ、雅彦を苦しめている。自分は一体、何をしているのだろう。未来を変えるなんて、おこがましい考えだったのだ。自分の存在そのものが、この世界の調和を乱す毒になっている。 「……やっぱり、いた」 背後から、優しい声がした。振り返ると、涼子が立っていた。その手には、温かいココアが二つ握られている。 「なんで、ここに?」 「遠藤課長から聞いた。大変だったんだってね」 涼子は、紗江子の隣に静かに腰を下ろし、ココアの缶を一つ手渡した。 「……ごめん、涼子。私、あなたの気持ちを知ってたのに」 「もういいよ、そんなこと」 涼子は、星空を見上げながら言った。 「最初は、紗江子のこと、すごく恨んだ。でも、ずっと見ててわかった。橘先輩が紗江子を見る目は、私を見る目とは全然違った。先輩は、紗江子にだけ、本当の自分を見せてたんだね。私じゃ、ダメだったんだよ」 涼子の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。 「私、先輩に憧れてただけだったのかも。本当の恋じゃなかった。でも、紗江子は違う。紗江子は、本気で先輩を支えようとしてる。だから……負けたって思った」 「涼子……」 「だから、泣かないでよ、親友でしょ。あんたが泣いてたら、私、どうしていいかわかんないじゃん」 涼子は、無理に作った笑顔で紗江子の背中を叩いた。その温かい友情に、紗江子の涙腺は再び決壊した。二人は、どちらが先に泣き止むともなく、ただ静かに涙を流し続けた。親友との間にあったわだかまりが、温かいココアと共に、ゆっくりと溶けていくようだった。 涼子との和解は、紗江子に勇気を与えた。自分は一人ではない。 翌日、紗江子は会社を休み、雅彦の元へ向かう決心をした。彼が週末に縁談相手と会う前に、伝えなければならないことがあった。 雅彦のアパートのドアを叩くと、憔悴しきった彼が出てきた。 「桜井さん……どうして」 「話が、あります」 部屋に通された紗江子は、深呼吸をしてから、真っ直ぐに雅彦の目を見て言った。 「私は、あなたに夢を諦めてほしくない」 「でも、親父を説得なんてできない。会社にも、迷惑はかけられない……」 「迷惑なんかじゃない。みんな、あなたのデザインを待ってる。遠藤課長も、涼子も、私も。あなたの才能を信じてる」 紗江子は、自分の過去の記憶を辿った。生前の雅彦は、結局デザイナーの夢を諦め、家業を継いだのではなかったか? いや、違う。彼は、結婚後、独立して小さなデザイン事務所を立ち上げたのだ。そうだ、彼は諦めなかった。自分の力で、道を切り拓いたのだ。 「諦めないで。あなたのデザインは、人の心を温かくする力がある。それは、お金なんかじゃ測れない、尊い才能よ。あなたのお父様は、まだそれに気づいていないだけ。いつか、きっとわかってくれる」 紗江子の言葉には、未来を知る者だけが持つ、絶対的な確信が込められていた。それは、予言であり、祈りだった。 「どうして……どうして、そんなに俺を信じてくれるんだ?」 雅-は、震える声で尋ねた。 「それは……」 紗江子は、言葉に詰まった。「私は未来のあなたの妻だからです」とは言えない。 「……それは、私が、あなたのことを、誰よりも……愛しているからです」 それは、二十四歳の桜井紗江子の告白であり、同時に、五十二歳の橘紗江子の、時空を超えた魂の叫びだった。 雅彦の目から、大粒の涙が溢れた。彼は、紗江子の華奢な身体を、壊れ物を抱きしめるように、強く、強く抱きしめた。 「ありがとう……紗江子」 初めて名前で呼ばれた。その響きが、紗江子の心を震わせる。 雅彦の腕の中で、紗江子は悟った。 自分がすべきことは、無理に未来を変えることではなかった。彼の病を防いだり、寿命を延ばしたりすることではなかった。ただ、若き日の彼が、人生の困難に立ち向かう勇気を持てるように、孤独な彼に寄り添い、その才能と未来を、誰よりも強く信じてあげること。それだけだったのだ。 歴史は、大きくは変わらないのかもしれない。雅彦は、いずれ病を得るのかもしれない。でも、もし彼が、誰かに深く愛され、自分の夢を信じ抜いて生きたという記憶を持って人生を歩めるなら、その人生は、決して不幸なものではないはずだ。 紗江子は、介入者ではなく、伴走者になることを決意した。彼の人生が、たとえ短くとも、最高に輝かしいものになるように。 過去を受け入れ、未来を憂うのをやめた瞬間、紗江子の心に、穏やかな光が差し込んだ。 --- **第四部:深紅の誓いと別れの刻** 雅彦は、変わった。紗江子の告白と、涼子をはじめとする同僚たちの励ましを受け、彼は迷いを振り払った。週末、彼は縁談をきっぱりと断り、父親に宣言した。 「俺は、家を継がない。自分の力で、デザイナーとして生きていく。勘当されても構わない」 息子の固い決意に、父親は激昂したが、最終的には沈黙した。それは、完全な断絶を意味していた。雅彦は、実家からの援助を一切断たれ、一人で生きていくことになった。しかし、彼の表情は、以前よりもずっと晴れやかだった。 週が明け、雅彦は最終プレゼンテーションに臨んだ。彼の言葉は情熱に溢れ、デザインに込められた想いは、役員たちの心を強く揺さぶった。結果は、満場一致での採用。プロジェクトは大成功を収めた。 社内は、祝賀ムードに包まれた。その夜、プロジェクトチームでささやかな打ち上げが開かれた。その席で、雅彦は皆の前で、紗江子の手を握り、言った。 「このプロジェクトが成功したのは、ずっと俺を信じて支えてくれた、桜井さんのおかげです。……紗江子、俺と、結婚を前提に付き合ってください」 周囲から、歓声と拍手が沸き起こる。涼子は、自分のことのように喜び、涙を浮かべて紗江子の背中を押した。紗江子は、頬を赤らめながら、深く頷いた。二十八年前に、実際に交わされたプロポーズとは少し違っていたが、彼の真っ直ぐな想いは、あの時と少しも変わらなかった。 数日後、仕事帰りに雅彦は紗江子をカフェに誘った。彼は少し照れくさそうに、スケッチブックを取り出した。 「これ、見てほしいんだ」 開かれたページに描かれていたのは、あのルビーの指輪のデザイン画だった。 「……これ」 「うん。今回のプロジェクトが成功したら、君に贈りたいと思って、ずっと考えてたんだ」 雅彦は、指輪のデザインを指でなぞりながら、語り始めた。 「中央のルビーは、情熱の赤。俺の、デザイナーとしての情熱と、君への情熱。両脇のダイヤモンドは、君の涙みたいに綺麗で、どんなものにも屈しない固い意志を表してる。そして、それを支えるプラチナの腕は、俺が君を、ずっと守っていくっていう誓いなんだ」 彼は、未来の紗江子が知っている「Saekoへ。情熱と、変わらぬ愛を込めて」という言葉を、デザイン画の横に書き加えた。 「いつか、本物にして君に贈りたい。今はまだ、安月給だから無理だけど……。三十年後、俺たちが結婚三十周年を迎える頃には、きっと、これを贈れるような男になってみせるよ」 紗江子の目から、涙が止めどなく溢れ出した。 そうだったのか。この指輪は、単なる「果たされなかった約束」ではなかった。若き日の雅彦が、夢への第一歩を踏み出した証であり、自分への愛を誓った、情熱の結晶だったのだ。それは、彼の人生で最も輝かしい瞬間に生まれた、希望そのものだった。 自分は、この指輪を、孤独を埋めるための慰めとして、過去への後悔の象徴として身につけていた。なんて愚かだったのだろう。この指輪に込められた、雅彦の本当の想いを、少しも理解していなかった。 「ありがとう、雅彦さん……。ありがとう……」 紗江子は、スケッチブックを胸に抱きしめ、泣きじゃくった。それは、後悔の涙ではなく、感謝と、歓喜の涙だった。 雅彦は、優しく紗江子の涙を拭う。その時、紗江子の身体が、ふわりと光に包まれ始めた。 「……紗江子?」 雅彦が、不思議そうに彼女を見る。紗江子の身体が、少しずつ透けていく。 ああ、時間だ。 自分の役割は、終わったのだ。 若き日の雅彦が、自分の力で未来を切り拓く決意をした。 若い自分が、彼の愛を受け止めた。 涼子との友情も、再生された。 そして何より、自分自身が、雅彦の愛の本当の意味を知ることができた。 もう、ここにはいられない。そして、いる必要もない。 「雅彦さん」 紗江子は、最後の力を振り絞って、微笑んだ。 「あなたの人生は、最高に素晴らしいものになるわ。あなたの夢は、叶う。そして、あなたは、たくさんの人を幸せにする。だから、自信を持って、前だけを向いて生きて」 「紗江子、何を言ってるんだ? 体が……消えていく……!」 雅彦が、狼狽して紗江子の腕を掴もうとするが、その手は空を切る。 「大丈夫。私は、ずっとあなたの側にいる。三十年先も、その先も、ずっと。あなたのことを、世界で一番愛してる」 それが、彼女がその世界で発した、最後の言葉だった。 雅彦の驚きと悲しみに満ちた顔が、涙で滲む。涼子の泣き笑いの顔が、遠ざかっていく。 ありがとう、私の愛しい人。 ありがとう、私の大切な友人。 ありがとう、若かった頃の、私。 眩い光が、紗江子の全身を包み込む。左手の薬指に、確かな重みと、懐かしい冷たさが戻ってくるのを感じながら、彼女の意識は、再び深い闇の中へと沈んでいった。 --- **終章:未来を照らす深紅の光** 柔らかな朝の光が、瞼を優しく撫でる。 紗江子は、ゆっくりと目を開けた。そこは、見慣れた自宅の寝室だった。窓の外からは、小鳥のさえずりが聞こえる。机の上のデジタル時計は、五十二歳の誕生日の翌朝を告げていた。 まるで、長い長い夢を見ていたかのようだった。 しかし、それは夢ではなかった。 紗江子は、おそるおそる自分の左手を見た。薬指には、あのルビーの指輪が、朝日に照らされて、静かに、しかし力強く輝いていた。その深紅の色は、以前よりも一層深く、温かく感じられた。 胸の奥にあった、重く冷たい塊が、跡形もなく消え去っていることに気づく。十年もの間、彼女を苛んできた後悔と孤独は、そこにはなかった。代わりに、心が温かい愛情と、穏やかな感謝の気持ちで満たされている。 雅彦との人生は、短かったかもしれない。共に過ごせた時間は、決して長くはなかった。でも、彼の人生は、決して不幸ではなかった。彼は夢を追い、自分の力で道を切り拓き、愛する人と結ばれ、そして、最後まで情熱を失わなかった。その短い生涯は、ダイヤモンドのように固く、ルビーのように燃える、輝かしいものだったのだ。 過去は変えられなかった。雅彦の寿命を延ばすこともできなかった。でも、それでよかったのだ。過去を知り、彼の苦悩と、彼の愛の本当の意味を知ったことで、救われたのは、未来の彼ではなく、現在の自分自身だった。 もう、この指輪は、孤独を埋めるための慰めではない。過去に縛り付けるための楔でもない。 これは、雅彦が生きた証。彼の情熱と愛の結晶。そして、これから先の自分の人生を照らしてくれる、希望の光だ。 紗江子はベッドから起き上がると、書斎に向かい、あのスケッチブックを手に取った。デザイン画のページを開く。そこには、雅彦の文字で「Saekoへ。情熱と、変わらぬ愛を込めて」と記されている。その文字が、以前よりもずっと鮮やかに、力強く見えた。 その時、スマートフォンの着信音が鳴った。画面には、「健太」の文字。 「もしもし、母さん? 遅くなったけど、誕生日おめでとう」 息子の優しい声が、耳に響く。 「ありがとう、健太」 「旅行から、今、家の近くまで戻ってきたんだ。これからそっちに寄ってもいい? 美咲(健太の妻)も、孫の陽菜も、母さんに会いたがってる」 電話の向こうから、「おばあちゃーん!」という、五歳になる孫の元気な声が聞こえてくる。 紗江子の目から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちた。でも、それは悲しみの涙ではなかった。 「ええ、もちろんよ。待ってるわ」 電話を切り、紗江子は窓辺に立った。窓の外には、新しい一日を告げる、どこまでも青く澄み渡った空が広がっている。 彼女は、左手のルビーの指輪に、そっと口づけをした。 「ありがとう、雅彦さん。私、もう大丈夫よ。あなたのくれたこの光と一緒に、ちゃんと前を向いて歩いていくから」 深紅の石が、彼女の誓いに応えるように、キラリと輝いた。それは、過去から未来へと繋がる、永遠の愛のコンパス。紗江子の新しい人生は、今、始まったばかりだった。
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