わが魂の銀、その記憶の連なりについて
私の名はキケ。スペインの片田舎、陽光が石畳を白く焼き、忘れられた神々の吐息がオリーブの葉を揺らす地で、ただひたすらに銀と対話する彫金師だ。目の前にあるこのブレスレット、S2125Lと無機質な記号で呼ばれるそれに、私が込めた物語を今、解き放とうと思う。これは単なる装身具ではない。私の生きた時間そのものであり、イベリアの魂が結晶化した記憶の奔流なのだ。
すべては、グラナダのアルハンブラ、その獅子の中庭で見た噴水の水滴から始まった。灼熱のアンダルシアの太陽の下、大理石の獅子の口からこぼれ落ちる水は、一瞬、時を止め、完璧な球体となって宙を舞う。それは生まれ、輝き、そして重力という宿命に従って姿を変え、長く尾を引いて地に吸い込まれていく。誕生と死、歓喜と哀愁のすべてが、その一滴に凝縮されていた。私はその光景に、人間の、いや、生命のメタファーを見たのだ。
マドリードのプラドでベラスケスの「ラス・メニーナス」と対峙した時のことを覚えているだろうか。光と影が織りなす静謐な空間、その中でマルガリータ王女が放つ無垢な輝き。あるいは、バルセロナでガウディの有機的な曲線に心を奪われ、自然と建築の境界が溶け合う様を見た時の衝撃。ピカソが「ゲルニカ」で描いた絶望の涙、ダリが溶かした時計で表現した歪んだ時間。スペインという土地は、常に極端な感情の振れ幅の中で、その芸術を育んできた。このブレスレットは、そのすべてを銀という永遠の素材に封じ込めようとする、私のささやかな、しかし燃えるような情熱の証なのだ。
S2125Lを構成する一つ一つのパーツは、あのアルハンブラの水滴であり、王女のドレスの襞であり、ゲルニカで流された涙だ。私はデザイン画を描かない。溶かした純銀の塊を手に取り、槌を振るい、炎を操りながら、記憶の中にあるイメージを直接銀に叩き込んでいく。それぞれのパーツは、完全に同じではない。それは、私たちの記憶が一つとして同じでないのと同じだ。喜びの記憶はより丸く、輝きを放ち、悲しみの記憶は少し鋭く、影を宿す。64グラムという重さは、積み重ねてきた人生の重みそのもの。33ミリという幅は、過去から未来へと続く時間の川の広がりを象徴している。
これらが連なり、一つの腕輪となった時、それはもはや個々の記憶の集合体ではない。所有者の肌の上で、一つの壮大な物語として流れ始める。冷たいはずの銀が、身に着ける人の体温を吸い、まるで生きているかのように脈打ち始めるだろう。動くたびに、パーツ同士が微かに触れ合い、澄んだ音を立てる。それは遠い昔の教会の鐘の音か、あるいはフラメンコの踊り子の力強い足音か。所有者自身の記憶と共鳴し、新たな音色を奏でていくのだ。
なぜスペインでこれを作らなければならなかったのか。それは、この国の光と影が、私の魂を形成したからに他ならない。太陽はあまりに強く、影はあまりに濃い。そのコントラストが、銀の輝きと陰影に命を吹き込む。このブレスレットは、マドリードの喧騒でも、バルセロナの自由な空気でもなく、名もなき村の、沈黙と、歴史と、そして変わることのない自然のサイクルの中で生まれた。
これを手にするあなたへ。
どうか、これを単なる美しいモノとして見ないでほしい。これは私の哲学であり、詩であり、そしてあなた自身の物語を刻むための器だ。19センチという長さは、あなたの手首を優しく、しかし確かな存在感で包み込むだろう。そして、あなたの人生という旅路において、無言の共犯者となるはずだ。喜びの時には共に輝き、悲しみの時にはその冷たさであなたを現実に引き戻し、そして、どんな時もあなたの傍らで、静かに、力強く、その記憶の連なりを語り続けるだろう。
キケ、魂を刻む者より
;)
