【作品概要|Overview】
アーティスト名:中山ラビ
タイトル:ラビ・もうすぐ
レーベル/型番:Kitty Records MKF 1008
フォーマット:LP / Stereo
リリース年:1976年
ジャンル/スタイル:Folk, Psychedelic Rock, Acid Folk, Folk Rock, Acoustic
中山ラビが1976年にKitty Recordsからリリースした通算4作目となるアルバム『ラビ・もうすぐ』は、70年代日本のフォーク/シンガーソングライターシーンの枠組みを静かに浸食する、浮遊感と内省が交錯する音響作品です。タイトルの示す「もうすぐ」という宙吊りの時間感覚は、アルバム全体を貫く微細な揺らぎとして顕現しています。全10曲構成で、個人の経験と心象風景が、アコースティックな響きの中に繊細に織り込まれた私的ドキュメントとも呼べる内容です。
【構造|Auditory Architecture & Temporal Drift】
A1「一年がおわるわ」から既に、音像は霞がかった遠景のような質感を見せます。ラビの声とアコースティック楽器が、現実と非現実の境界線を曖昧にするかのように配置されており、聴き手は空間の奥行きを見失う感覚に陥ります。A3「念仏ぐらし」やA5「ひとりごと」といった楽曲に顕著な、特定のビートに厳密に拘泥しない、呼吸のようなリズム感は、リスナーの内部時計に微細な誤差を生じさせ、時間を引き延ばす作用をもたらします。
A2「いいじゃないか」では、乾いた響きの中に時折現れるサイケデリックな残響が、意識の変容を示唆します。B4「アフリカへ」のようなタイトルは、単なる物理的な旅ではなく、精神的な移動や異世界への憧憬を想起させ、そのサウンドは現実から遊離した浮遊感を伴います。アルバム全体は、特定の感情や情景に固定されず、リスナー自身の記憶や経験が音響空間と共振することで、多様な解釈を許容する多層的な構造を有します。これは、時間を遡行し、あるいは予期せぬ未来へと漂流させる、聴覚的なタイムマシンのようでもあります。
【文脈|Contextual Field Notes & Memory Fossilization】
中山ラビは、既存の歌謡曲や商業フォークとは一線を画し、アングラ演劇やブルースといった文脈からその表現を展開してきた稀有な存在です。彼女の歌唱は、単なるメロディの再現ではなく、自身の身体を通した言葉の放出であり、「演劇的・肉体的・私語的な“生声の文学”」として、その後の女性シンガーソングライターたちに潜在的な影響を与えたと言えるでしょう。『ラビ・もうすぐ』がリリースされた1976年は、日本の音楽シーンが多様化しつつも、ある種の定型が確立され始めていた時期にあたります。その中で本作が放つ、内向的でありながらも鋭利な音響感覚は、時代の流れに容易に乗らない異端としてのラビのスタンスを明確に示しています。
この盤に刻まれた、内省的なアコースティックサウンドとサイケデリックな残響の配合は、後の日本のアンビエントミュージックや、現代のサウンドアートにおけるノスタルジックあるいはメランコリックな音響探求の中に、遠い共鳴点を見出すことが可能かもしれません。それは、ある時代の個人的な記憶が、音響という媒体を通して現代に化石として残り、新たな知覚を喚起するプロセスでもあります。
【状態|Material Condition】
メディア:NM(目立つスレ・傷なし)
スリーブ:NM-(微細なスレあり。大きな傷み、汚れ、破れなし。全体的に非常に良好)
帯:付属
インサート:付属
【取引詳細|Terms & Logistics】
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)にて丁寧に梱包・発送いたします。
支払:!かんたん決済(落札後5日以内にお手続きをお願いいたします)
同梱:可能です(複数落札時は取引ナビよりご相談ください)
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