
この商品は、コロン商会の鶴印(最高級品)のケースにブルウル兄弟商会の最高級ムーブメント(17石 BB&Co刻印)が収められた、2つの商館がコラボしたと思われる非常に珍しい高級商館時計です。
後からムーブメントを入れ替えたリケース品ではなく、オリジナルの状態でコロン商会のケースとブルウル兄弟商会のムーブメントが組み合わされています。
根拠は、ケースのシリアル番号とムーブメントのシリアル番号が一致するからです。
さらに言うと、ムーブメントをケースに固定するための、ケース側の切り欠きとムーブメント側の突起の位置が一致しており、ケースに残った機止めのネジの跡もムーブメントの機止めネジの位置と一致しています。
このようなコラボが行われた背景は、資料・情報がなく不明ですが、大変珍しいです。
また、この時計の最初の持ち主は、日清戦争(明治27年~28年)にこの時計を携えて従軍し、戦火を潜り抜けて無事生還できたようで、共に生き延びたこの時計を称える漢詩が裏蓋の内側に手彫りで彫られています。(四字絶句の漢詩)
その漢詩を彫った彫金師の銘が裏蓋側面に彫られており、”光長 刻”とあるため、筆跡的にも明治時代~大正時代に活躍した有名な彫金家「豊川光長」による彫金と思われます。
日清戦争の終結は明治28年11月30日で、この時計に漢詩が彫られたのは明治28年12月なので、日清戦争終結直後に彫られており、年代から言って二代目豊川光長によるものと思われます。
彫られている漢詩の内容は、商品説明の一番最後に書きますので、興味がある方はご覧ください。
ケースは、明治8年(1875年)から横浜居留地10番に開業したコロン商会(J.COLOMB & CO.)の製造です。
銀無垢ケースの裏蓋の内側に、鶴印がありますので、コロンの最上級グレードです。
ムーブメントは、明治21年(1888年)から横浜居留地24番に開業した、アメリカ系商館 ブルウル兄弟商会(Bruhl Bros&Co.)の製造です。
17石で、仕上げの良いアンクルが採用され、ブリッジにBB&Coの刻印があり、文字板には「Bruhl Bros&Co. Yokohama」のサインがある最高級ムーブメントです。
漢詩の内容より、明治27年(1894年)開戦の日清戦争に持参された時計と思われますので、今から132年以上前の時計です。
コロン鶴印の銀無垢ケースの状態は、側面に極薄で小さな凹みとが1か所あるのと、小傷が若干ある程度で、大変綺麗です。
戦場に持ち込まれた時計とは思えない綺麗さです。
ブルウル兄弟商会の高級ムーブメントは、薄金色にキラキラ輝き、大変美しいです。
ムーブメントのシリアル番号とケースのシリアル番号(下3桁)は一致しています。
出品に際し、オーバーホール済です。
・分解清掃/注油の実施。
・錆取り(可能な限り)
・入手時に不具合箇所があった場合は修理。
・欠品してる部品があった場合は、可能な限りストック品で補完、又は別作。
・過去のメンテで不適切な部品が使われていた場合は、可能な限り適切な部品に交換。(サイズ/ピッチ違いのネジ、等)
・動作確認。
※ 精度は、後述。
■直径/重さ
直径: 58.5mm ※リューズを除く
重さ: 130.7g
■ケース
銀無垢のオリジナルケースです。
側面に極薄で小さな凹みとが1か所あるのと、小傷が若干ある程度で、大変綺麗です。
リューズを押すと、裏蓋が跳ね上がり、開きます。
裏蓋を開けると、ムーブメントがガラスカバーで覆われています。
前面のガラス風防は、目立つ傷はなく、概ね綺麗です。
■文字板
オリジナルのポーセリンダイヤルです。
「Bruhl Bros&Co. Yokohama」のサインがあります。
(ブルウル兄弟商会の高級機のみにあるサイン)
目立つ割れ、欠けは無く、概ね綺麗です。
■ムーブメント
分解清掃時に石数を数えると、17石でした。
ブリッジにBB&Coの刻印(ブルウル兄弟商会の高級機のみにある刻印)があります。
仕上げの良いアンクルが採用されています。
時刻合わせは、11時の位置の突起を爪で押し込みながら、リューズを回してください。
出品に際し、オーバーホールしています。
フル巻き時の精度(日差)は、タイムグラファー計測で下記の通りです。
・文字板上(平置き): -91秒
・文字板下 : -97秒
・12時上(縦置き) : +237秒
※ ただし、精度は参考ですので、保証するものではありません。
■初期動作保証
万が一動作不良があった場合は、到着後一週間以内にご連絡頂きましたら出来る限りの対応をさせて頂きます。
(精度は参考値なので保証対象外)
■修理・メンテナンスをお受けします
御落札頂いた方には、受け取り確認頂いた後に、当方の連絡先を取引ナビでご連絡いたします。
御落札頂いた時計だけでなく、他で購入された時計の修理、メンテナンスもお受けしますので、何かありましたらご連絡ください。
天真折れ、巻真折れ(巻真紛失)、ガラス割れなどの対応も可能です。
※ お受けできない時計もありますので、詳しくは落札後の取引ナビでご説明いたします。
【参考】裏蓋に彫られた漢詩の内容と要約
■原文
明治外征、實彌年餘、予可之幸、率先従軍、殿而凱旋、厥間在身、衣冠與汝、
彈雨疾疫、汝倶甞之、魴魚尾、汝同其勞、職務茲完、旭章輝胸、天賜不、
汝力亦與、嗚呼時儀、汝雖微物、爲吾孝子、爲吾忠僕、聖恩無量、汝弗遺、
明治二十八年十二月 高橋茂識
※ 何文字かここで表示できない漢字がありますが、四字絶句と呼ばれる4文字毎に読点で区切られた漢詩です。
■copilotによる要約
明治の対外戦争は、実に一年あまりに及んだ。
私は幸運にもいち早く従軍し、最後まで軍に殿(しんがり)として付き従い、ついに凱旋することができた。
その間、身に起こったことは、衣服も冠もお前と共にし、弾雨や激しい疫病も、お前はすべて経験した。
フナの赤い尾のように(戦場の苦労で)赤くなったのも、お前は共に耐えた。
こうして職務は今ここに完了し、旭日章が胸に輝く。
これは天からの計り知れない賜りであり、お前の力もまたそこに加わっている。
ああ、時の儀礼により、お前はたとえ取るに足らぬ物であっても、私にとっては孝なる子であり、忠実な僕(しもべ)である。
聖なる恩恵は限りなく、お前もまたその恵みから漏れることはない。
内容の整理(何を言っている文章か)
- 筆者は明治期の「外征」(おそらく日清戦争)に従軍した人物。
- 「汝(なんじ)」は人ではなく、身の回りの品(衣冠)や軍装具を指す擬人化表現。
- 戦場で共に苦労した「装備」や「軍服」に語りかけている文章と読める。
- 戦場での苦労(弾雨・疫病・赤尾の比喩)を共にしたことを称えている。
- 凱旋し、勲章(旭章)を授かったことを述べる。
- その栄誉は自分だけでなく、共に戦った「汝(=軍装具)」にも及ぶと語る。
- 最後に、儀礼としてその装具にも恩賞が与えられることを述べる。
文中の比喩・語句の補足
- 「魴魚尾」
フナの尾が赤いことから、戦場の苦労で赤くなった様子を比喩的に表現。
- 「旭章」
明治期の勲章の一つ「旭日章」。
- 「汝雖微物」
「お前はつまらない物(=無生物)ではあるが」の意。
- 「為吾孝子・為吾忠僕」
装具を「孝なる子」「忠実な僕」として擬人化し、労をねぎらう表現。
豊川光長について
https://www.kobijutsu.ne.jp/wp/%E8%B1%8A%E5%B7%9D%E5%85%89%E9%95%B7/