5CD
ラトル/新ウィーン楽派の音楽
シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルン作品集
シェーンベルク:
・『グレの歌』
・室内交響曲 第1番(15のソロ楽器のための)
・『期待』(モノドラマ)
・管弦楽のための変奏曲
・5つの管弦楽曲 作品16(オリジナル・ヴァージョン)
・『ワルシャワの生き残り』
ヴェーベルン:
・管弦楽のための6つの小品 作品6
・管弦楽のための5つの小品 作品10より-第3曲、第4曲、第5曲
ベルク:
・歌劇『ルル』からの5つの交響的小品
・ヴァイオリン協奏曲
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(Ms)
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)、ほか
サー・サイモン・ラトル(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ほか
【久々の復活となる音源2曲】
シェーンベルクの『ワルシャワの生き残り』とベルクのヴァイオリン協奏曲の終わりの部分は、ラトルの20世紀音楽に関する映像シリーズ「リーヴィング・ホーム」と同じ音源からCD化されたものの、だいぶ以前に廃盤になってしまっていたものです。ラトルは両作品ともレコーディングはしていないので、この復活は嬉しいところです。
【グレの歌】
2001年のベルリン芸術週間の目玉となった記念碑的公演をライヴ収録したもの。当公演のためにおこなわれたリハーサル日数は、ベルリン・フィルとしては異例に長い、オーケストラ全体の練習が4日、パートごとの練習が4日間の計8日間となっています。
『グレの歌』は最初、シェーンベルクがまだ若い頃に一編の歌曲として書き上げられ、その後巨大化の道を歩んだという後期ロマン派風の作品。ワグネリズムの影響、特に『神々のたそがれ』や『さまよえるオランダ人』を髣髴とさせる場面があるなど、シェーンベルクらしからぬ親しみやすさと、通常のレパートリーではおそらく最大音量と言われるその迫力あるサウンドと変化に富む曲調が魅力的な傑作です。
『グレの歌』は、実在のデンマーク国王ヴァルデマール(在位1157-1182年)をめぐる伝説にもとづいています。国王とその愛人トーヴェとの悲しくもグロテスクな物語のあらましは以下の通りです。
この手の寓話に良くあるパターンですが、国王ヴァルデマールには嫉妬深くわがままな妃がおりました。嫌気がさしたヴァルデマールは、トーヴェという美しく気立ての良い女性を愛人とし、グレの地にある狩猟用の城郭で逢瀬を重ねます。
が、ほどなく不倫は妃にも知れるところとなり、やがてトーヴェは妃によって毒殺されてしまうのです。ヴァルデマール王は激昂して神を呪ってしまいそれが原因で天罰によって命を落とすこととなり、おまけにその魂は昇天することが許されず、大勢の兵士の幽霊を引き連れトーヴェの魂を求めて夜な夜なグレの地を徘徊することになってしまいます。
時は流れ夏の嵐に替わって実りの秋が到来。収穫の季節にふさわしく農夫も登場し、やがて道化師と語り手も登場して、幽霊たちの壮絶な合唱を交えながらも、二人の魂の救済に向けて盛り上がりをみせます。最後は混成8部合唱による壮大な太陽の賛歌となっており、女声合唱の参加による色彩の変化が、魂の救済の可能性を暗示しているかのようです。
演奏は非常にクオリティが高く、ベルリン・フィル初の『グレの歌』にふさわしい強力なサウンドが最大の聴きものとなっています。指揮者のラトルが打楽器出身で近・現代音楽に造詣が深いということもあってか、特殊奏法への配慮や打楽器パートの強調が実に面白く、「歌曲的な」アプローチとはだいぶ雰囲気の異なるものになっています。
大人数の合唱も凄い迫力で、第3部での幽霊たちの合唱にはまさに鬼気迫るものがありました。5管編成オーバーの巨大オーケストラと十分に渡り合う彼らのパワーは圧倒的ですが、それもラトルの適切な誘導があればこそでしょう。名高い男声12部合唱での仕上がりも完璧です。
もちろん、静かな部分でのアプローチも優れており、各パートが十分に見通せる透明度の高さは、この作品におけるシェーンベルクのスタンスが、完成までに10年を要したという年月の経過ゆえに微妙に変化していたことさえ窺わせる精妙なもので、さすがはラトルと思わせます。
独唱者陣では、山鳩役のアンネ・ゾフィー・フォン・オッターが圧巻。『グレの歌』の内面的なクライマックスでもある「山鳩の歌」における重みと深みのある歌は過去最高といいたくなる感動的な内容です。その他では、クヴァストホフの農夫&語り、ラングリッジの道化が見事な仕上がりです。
CD1&2
・シェーンベルク:『グレの歌』
カリタ・マッティラ(S)
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(Ms)
トマス・モーザー(T)
フィリップ・ラングリッジ(T)
トマス・クヴァストホフ(Bs)
ベルリン放送合唱団
ライプツィヒ中部ドイツ放送合唱団
エルンスト・ゼンフ合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
サー・サイモン・ラトル(指揮)
録音時期:2001年9月18日、20日、11月9日
録音場所:フィルハーモニー、ベルリン
録音方式:デジタル(ライヴ)
CD3
・シェーンベルク:室内交響曲 第1番(15のソロ楽器のための) 作品9 [26:45]
バーミンガム・コンテンポラリー・ミュージック・グループ
録音時期:1993年10月9&10日
録音場所:シンフォニー・ホール、バーミンガム
録音方式:デジタル(セッション)
・シェーンベルク:『期待』(モノドラマ) 作品17 [29:52]
フィリス・ブリン=ジュルソン(ソプラノ)
録音時期:1993年9月31日&10月1日
録音場所:シンフォニー・ホール、バーミンガム
録音方式:デジタル(セッション)
・シェーンベルク:管弦楽のための変奏曲 作品31 [21:20]
録音時期:1993年4月5&6日
録音場所:シンフォニー・ホール、バーミンガム
録音方式:デジタル(セッション)
CD4
・シェーンベルク:5つの管弦楽曲 作品16(オリジナル・ヴァージョン)
録音時期:1987年12月19-21日&1988年4月29日
録音場所:バターワース・ホール、ウォーウィック・アーツ・センター
録音方式:デジタル(セッション)
・ヴェーベルン:管弦楽のための6つの小品 作品6
録音時期:1988年4月29日
録音場所:バターワース・ホール、ウォーウィック・アーツ・センター
録音方式:デジタル(セッション)
・ヴェーベルン:管弦楽のための5つの小品 作品10より-第3曲、第4曲、第5曲
録音時期:1995年7月9-15日&8月8-12日
録音場所:シンフォニー・ホール、バーミンガム
録音方式:デジタル(セッション)
・ベルク:歌劇『ルル』からの5つの交響的小品
アーリーン・オジェー(ソプラノ)
録音時期:1987年12月19-21日
録音場所:バターワース・ホール、ウォーウィック・アーツ・センター
録音方式:デジタル(セッション)
CD5
・ブラームス(シェーンベルク編):ピアノ四重奏曲第1番ト短調作品25
録音時期:1984年6月19日
録音場所:ザ・モールティングス、スネイプ、GB
録音方式:デジタル(セッション)
・シェーンベルク:『ワルシャワの生き残り』作品16
フランツ・マツーラ(ナレーター)
バーミンガム市交響合唱団男声メンバー
録音時期:1995年7月9-15日&8月8-12日
録音場所:シンフォニー・ホール、バーミンガム
録音方式:デジタル(ライヴ)
・ベルク:ヴァイオリン協奏曲(終結部)
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
録音時期:1995年7月9-15日&8月8-12日
録音場所:シンフォニー・ホール、バーミンガム
録音方式:デジタル(ライヴ)
バーミンガム市交響楽団
サイモン・ラトル(指揮)
クラムシェル・ボックス各CD紙製ケース入り32Pブックレット。
コンディション良好。
発送は、日本郵便クリックポスト(追跡可能)を予定しています。
土曜、日曜日は発送作業ができませんこと、ご了承ください。