ロッシーニ 歌劇 エジプトのモーセ Blu-ray 未開封 ザネッラート エスポジト センデルスカヤ ガナッシ 2011.8 ロベルト アッバード ヴィック演出 ペーザロROFイタリア語

ペーザロ ロッシーニ オペラ フェスティバルでの “エジプトのモーゼ” です。ロッシーニのセリア作品の中では、これと“ウィリアム テル”は “ブーム” 以前から継続的に上演が行われてきた稀有な例だと言えましょう。共に名曲ですし 超有名なストーリーである事も大きいのだと考えます。この曲はバージョンの問題が（ヴェルディの “ドン カルロ” 並の曲折で）ちょっとだけ複雑です。要するに イタリア版 “エジプトのモーゼ ” をパリ上演用に大幅に増補改作したものが フランス語版“モーゼとファラオ” で、それを再度イタリア語歌詞に改めたものが 以前から一般的に上演が続けられてきた “モーゼ ” という事になるらしいです。少し前までは “モーゼ” と言えば 最後の版を指すことが一般的だったようですが、近年の原典指向を反映して 現在では３版それぞれの上演が行われている様で、作品の評価と人気の高さが窺えます。
曲が抜群に良いです。例の “祈り” のパラフレーズが作られている事からも分かる通り 全曲通して良いメロディーと雰囲気に溢れていて、ちょっと例外的な素晴らしさです。“宗教劇” という要素が 作曲にプラスに働いたのだと思います。歴史劇であると同時にオラトリオ風でもあり、ヴェルディの “ナブッコ” の原点はこの辺りにある様にも思えますし、また 遠く “運命の力” にも影を落としている様で 何かと興味が尽きません。
詳しくは分かりませんが ROFでも幾度かの上演があるのは確実で、上記の3版は取り上げ済みだろうと想像します。個人的には 歌といい容姿といい ペルトゥーシが歌った “モーゼとファラオ” フランス語版が印象深いですが、ザネッラートを主役にしたこの舞台も素晴らしかろうと想像します。低すぎず 軽すぎず 粗過ぎずの ちょうど頃合いの声は、イタリアオペラのバス役には最適だと思います。
時代を現代に移した演出も興味深いです。中近東を舞台にしたオペラの演出が “ブッファ” “セリア” を問わずにほとんど現代風に様変わりしたのは “世界的なファッション”だろうと思われます。現代の社会情勢を反映した鋭い視点ではあるものの、いわゆる“社会劇”は 観る側のポジションによって威力が激変するのも宿命で、当事者や近隣諸国の観客が感じる程の“リアルさ”“ブラックさ”が 遠国者にはそれ程に面白く響かないのが少し残念なところです。
余談ですが… 以前 テレビでロッシーニの伝記番組が放送されて、中に この“祈り” の実演が挿入されていました。カバリエとホーンが出ていて なんとも素晴らしい演奏でしたが、あれは一体何だったのか…。

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