— 健全な茎を残す名工の逸品 —
●越前国・相模守国綱（さがみのかみ くにつな）は、江戸時代初期に活躍した刀工で、越前下坂派の一門に属し、名匠・初代兼植（かねたね）の弟子として知られています。通称は「多兵衛尉（たへえのじょう）」。

彼は越前のみならず、江戸でも作刀を行っており、作品は越前新刀の中でもとくに評価が高く、実用性に優れた「業物（わざもの）」としても名を馳せました。

相模守国綱の刀は、反りが控えめで、元幅と先幅に変化のある引き締まった姿が特徴です。刃文は互の目（ぐのめ）を主体に、足（あし）がよく入り、変化に富んだ美しい焼刃を見せており、見る者を魅了します。

彼が属した下坂派は、安土桃山時代の天正年間（1573年頃）に近江国・坂本（現在の滋賀県大津市）に住していた「下坂八郎左衛門」を祖とするとされます。のちに下坂の名を継ぐ刀工たちは江戸をはじめ各地に広がり、その高い技術は各地で受け継がれていきました。相模守国綱はその系譜の中でもとくに優れた存在として知られています。


●地鉄の美しさと刃文の明瞭さが際立ちます。鍛えは板目肌を主体とし、良質な鉄が全面に現れています。地景は淡く柔らかく広がり、しっとりとした品格ある景色を醸しています。

刃文は直刃調を基調としつつ、わずかに湾れごころを見せる繊細で端正な作風。匂口は柔らかく明るく、光を受けることで立体的な表情を生み出し、鑑賞者に奥行きのある印象を与えます。

見た目の気品と地鉄の冴え、刃文の変化が見事に融合した、静かなる存在感を放つ一振りです。


◆◆◆◆
■種別■
刀
■長さ■
74.2cm
■反り■
2.0cm
■元幅■
3.0cm
■先幅■
2.1cm
■元重■
0.7cm
■先重■
0.5cm
■重量■
約780g
■目くぎ穴■
1個
■銘文■
表　相模守藤原國綱 裏　越前住
登録記号番号　栃木県　第54180号
令和6年2月15日交付

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