日本の武道全集本のうちの一冊。
現代武道十種目を中心として、各種武道における、それぞれの技術や歴史、開祖・流祖の教え、
伝書などの参考文献も含めて、その思想哲学から現代の組織化された国際的スポーツとしての側面についてまで網羅。
豊富な写真、資料などの写真図版はもとより、昭和末期刊行当時の、
その道の最高峰・第一人者たちを執筆陣としたもの。
技術の部は連続写真・解説あり。
本書は「柔道」。
本文のまえに、武道を志向する読者の精神的な支えとなるような特別読物を、
広く各界の第一人者が寄稿。
心之抄では武道、日本を代表する伝統芸能等その道の第一人者が、武道を学ぶ者への心構えや根本思想などの熱いメッセージを語るところから始まり、
技術之部では高位の指導者による演武写真・連続写真図解を豊富に掲載。
初代講道館館長・嘉納治五郎の「精力善用・自他共栄」先人名言に始まり、講道館十段・三船久蔵が「非凡は凡にひそむ」、「柔道の哲理」綱領五ヶ条、修練の心得、虚実、押さば回れ、変応の理、進歩と退歩、無心、調和についてを、
昭和の歌舞伎女形・人間国宝、尾上梅幸の名人芸談では舞台の上の残心について語る。
柔道を学ぶ心構え、道場・柔道衣と礼儀作法、立礼座礼の連続写真、練習の方法と心得の項では準備運動から柔道の基本動作(姿勢、組み方、くずし、作り、掛け、進退、体さばき、受け身など)基本的な所作の連続写真解説、試合にのぞむ態度と必勝法についてまでが心の抄。
技術の部では、講道館柔道の、現在用いられているおもな投げ技を連続写真で解説。相手を倒す投げ技、立ち技(手技/背負い投げ/背負い落とし/体落とし/肩車/すくい投げ/浮き落とし/隅落とし、腰技/大腰/浮き腰/釣り込み腰/払い腰/跳ね腰/移り腰/後ろ腰/釣り腰/腰車、足技/膝車/支え釣り込み足/送り足払い/出足払い/払い釣り込み足/小内刈り/大内刈り/小外刈り/小外掛け/大外刈り/内股/足車)、捨て身技(真捨て身技/ともえ投げ/引き込み返し/裏投げ、横捨て身技/浮き技/谷落とし/跳ね巻き込み/内巻込み/外巻き込み/横掛け/横車)。乱取りや試合で用いられる(固め技、抑え込み技/袈裟固め/くずれ袈裟固め/肩固め/上四方固め/くずれ四方固め/横四方固め/縦四方固め、絞め技/十字絞め/送襟絞め/片羽絞め/裸絞め/三角絞め、関節技/腕がらみ/腕ひしぎ十字固め/腕ひしぎ腕固め/腕ひしぎ脇固め/腕ひしぎ膝固め)計17の技をとりあげて連続写真解説。寝勝負/寝技の攻め方、固め技の攻め方についても別項で解説。また、技の連絡変化、乱取りや試合に多く使われる代表的な基本技を組み立てた形、救急処置としての活法(絞め技で落ちた場合の活の入れ方)などの連続写真解説も収載。
歴史之部では、嘉納治五郎と講道館柔道、嘉納治五郎の柔術修行、講道館柔道の創始、精力善用自他共栄について、わたしの修行時代の項では講道館九段・小谷澄之「わたしの修行時代」昭和七年オリンピックでレスリング代表として出場したエピソード、海外での指導の思い出などを語る。近代名人伝の項では、日本を代表する六人の柔道家をとりあげ、柔道が生んだ人生のドラマを古写真も交えて紹介。山下義韶はルーズベルト大統領を教え、広瀬武夫はロシアで勇名を轟かせ、永岡秀一は東の、磯員一は西のわが国柔道界の重鎮として仰がれ、三船久蔵は紫綬褒章を受け、杉村陽太郎は駐各国大使を歴任して、それぞれ後世に語り継がれるエピソードを残している。
読み応えのある、内容充実、愛好家必携の大変貴重な、今となっては希少な価値ある情報満載の資料本。