・書籍名(英名) : The New Cactus Lexicon 1st edition TEXT part
・著者名 : David R Hunt, Nigel P Taylor, Graham Charles et al.
・出版社:dh books(自費出版)
・発行年:2006年
・言語:英語
・形式 : ハードカバー, 285mm x 215mm, 373ページ
手元に1冊だけ余部があるので出品します。19年前の書籍で、美品の部類に入ります。カバーに多少のスレあり。内部は綺麗で、使用感もなく、書き込みや破れはありません(写真参照)。
なお、本書は本来2冊組となりますが、本出品はこのうちの文字だけのTEXTパートのみとなり、カラープレート版はありませんので、ご注意下さい。
<書籍説明>
2006年に発刊したサボテン図鑑で、ATLAS(図版書)とTEXT(解説書)の2冊組セットで発刊されました。サボテン科図鑑の決定版で、現時点におけるマスターピースともいえる書籍です。なお、本書以降、 現在に至るまでサボテン科を網羅的に扱った図鑑は出版されていません。
本書は既存のサボテン科図鑑とは一線を画し、歴史的な一冊といえます。それまで大混乱をきたしていたサボテン分類学にサイエンスのメスを大胆に入れ、偏りなくフラットに全種のサボテン科を網羅しており、発刊から18年以上年を経過した現時点でも、最も信用できる標準的なサボテン分類体系と言えます。
そもそもは、サボテン分類の大家であったドイツ人の故C. Backeberg(クルト・バッケベルグ)が1966年に発刊したサボテン図鑑のマスターピースとされたKakteen Lexiconのリニューアル版が1980年代中盤に企画されたのですが、出版社が変わった関係で昔の図版写真が一切使えなくなり、1990年代後半に企画を断念したことから始まります。
これを受けて、英国王立キューガーデンのDavid Hunt(デヴィッド・ハント)が、サボテン分類学の学会組織であったInternational Cactaceae Systematics Groupが2001年6月の会合内で、新たな全サボテン科を網羅したサボテンリストの構築を企画しました。この企画の図鑑版が本書となり、このため書籍名は「New Cactus Lexicon(新サボテン目録)」となった模様です。
ATLASパートでは2500種余りを網羅した図版が非常に素晴らしく、ここまでサボテン科の野外写真や標本クラスの株を網羅した図鑑は過去にありません。
TEXTパートはひたすら文字ですが、ある意味こちらの冊子の方が本書の本懐となります。2006年時点での分類体系を命名規約に則り記述し、属への検索表、各種の形態や生態の解説、シノニムリスト、IUCNレッドリスト評価まで詳細に掲載しており、無いのは種への検索表ぐらいとなります。後に出版された2013年の廉価版Illustrations(イラストレーションズ)では得られない文字情報の全てが、このパートに収録されています。
2013年には、一部の分類群のアップデート版となるNew Cactus Lexicon 2nd editionが用意され、先行して写真版としての小型版のIllustrations(イラストレーションズ)と改名されて発刊されました。その後に解説書となるテキストパートが発刊予定でしたが、2019年にハント氏が道半ばにして逝去してしまい、未発刊のままとなっています。
また、本書はハント氏の自費出版(dh Books)として発刊されている関係で、当初から発行部数が少なく、上記の通り逝去してしまった関係で、今後も増刷される予定がない絶版本となります。このため惜しいことに、ここまで素晴らしい書籍なのに、現在は海外でも相当入手難な超レア本となってしまいました。
今回の出品物は、上記2冊組のうちTEXTパートのみとなります。ただし、2nd ed. Illustrationsのみを所有の方にとっては、解説部分がありませんので、本書を利用するのが良いかと思います。そう簡単に入手はできませんので、ご興味のある方にはお勧めします。
<本書の特徴>
①現時点で最も信頼出来る標準分類体系
本書は、2006年時点での最新の分類学知見に基づき、第一著者のデヴィッド・ハント氏(当時は英国キューガーデン所属)を中心に執筆されました。ハント氏が革新的だったのは、過去のサボテン図鑑類と異なり、一人で分類体系を決めなかった点です。多くのサボテン研究者が参加した学会組織International Cactaceae Systematics Groupによる会合と、その学術誌Cactaceae Systematics Initiatives(全40号)を発刊し、同時にミルボーンの自宅でサロン形式による綿密な議論を繰り返し、最終的には同学会の編纂委員会による合議で決定したサボテン科の分類体系を採用しています。最終的には、民主的に多数決による決定を行いました。ここがイングリッシュ・ジェントルマンたるハント博士が人望を集め、本書を素晴らしい形で取りまとめられた由縁だと感じます。
なお、サボテン類は、一般的に砂漠等の乾燥地域に生育し、少数株の各個体群がコロニーとして孤立しやすいため、遺伝的な偏りが生じやすく個体変異や地域変異の出やすい傾向にあります。孤立個体群ごとに膨大な種名・亜種名・変種名が乱発され、また素人分類学者が多く関わってきたことから、命名規約を無視した無効名が膨大にあり、大きな混乱をきたしてきた歴史があります。
このような中で、ハント氏はサボテン科全体を系統立てて種を統合させ、分類単位を減らす体系を推し進めた統合分類学者として知られます。ハント博士の素晴らしい仕事の中には、過去の膨大な学名の整理があり、手掛けたシノニムリスト(同物異名目録)を見るに、半端ない労力と緻密さが見て取れます。
本書では、サボテン科全体に同じ相場観を持たせて、かなり大胆にスッキリと種を統合させ、種数はグッと減らされています。分類単位も、それまで多用されていた変種(var.)や品種(f.)を廃し、種(sp.)及び亜種(ssp.)に統一しています。この部分は多くの園芸関係者や分類学者からも不評を買いましたし、近年の遺伝子解析では、このような体系に反証するようなデータも示されつつあります。このため、個人的には、本書を基準としつつ、また細分化していく種群も多々ある流れになるだろうと感じています。
②キュー・データベースやCITESとの連動
分類学とは日進月歩で進むもので、近年では遺伝子解析のメスが入って、それまでの形態や分布からの古典分類学の概念が一部崩れつつあります。このため定期的なアップデートが必要なのですが、本書発刊以降の最新の分類学的アップデートについては、英国王立キュー・ガーデンのデータベースと連動して、反映され続けています(URL: https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30000028-2)。また、同時に、ワシントン条約のCITES付嘱書も、本分類体系をベースにリスティングされているため、事実上の世界標準となっています。