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E2016 稀代逸品 (きたいいっぴん)!人間国宝級 石黒光南作 GINZA TANAKA 純金製 霰 湯呑み 重量300.4g 神々しき黄金の輝き K24美術工芸品
E2016 稀代逸品 (きたいいっぴん)!人間国宝級 石黒光南作 GINZA TANAKA 純金製 霰 湯呑み 重量300.4g 神々しき黄金の輝き K24美術工芸品 [浏览原始页面]
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【オークションタイトル】
稀代逸品 (きたいいっぴん)!人間国宝級 石黒光南作 GINZA TANAKA 純金製 霰 湯呑み 重量300.4g 神々しき黄金の輝き K24美術工芸品

【商品説明】
ご覧いただき誠にありがとうございます。
まさに稀代逸品 (きたいいっぴん) と呼ぶにふさわしい、金工界の巨匠・石黒光南氏による純金製(K24)の霰(あられ)湯呑みをご紹介させていただきます。GINZA TANAKA(田中貴金属)の品質と、石黒光南氏の卓越した技術が融合した、まさに至高の美術工芸品でございます。
◆ 商品詳細 ◆
  • 作家名: 石黒光南 (いしぐろ こうなん)
  • 品名: 純金製 湯呑み
  • 意匠: 霰 (あられ)
  • 材質: 純金 (K24) - 底面に「純金」「光南」の刻印あり
  • 提携/販売元(推定): GINZA TANAKA (田中貴金属)
  • 重量: 300.4g
  • 寸法: 最大幅 約54.5mm × 高さ 約94.7mm
  • 付属品: なし (画像のものが全てです)
◆ デザインと商品の歴史・魅力の深掘り ◆
【石黒光南という存在】
石黒光南氏は、日本を代表する金工作家の一人であり、その作品は国内外で高く評価されています。伝統的な金工技術を継承しつつ、現代的な感性も取り入れた作風は、多くのコレクターや美術愛好家を魅了し続けています。特に皇室への献上品を手掛けるなど、その技術と信頼性は折り紙付き。本作に刻まれた「光南」の二文字は、最高峰の品質と芸術性の証です。
【GINZA TANAKAとの関連性】
GINZA TANAKA(田中貴金属ジュエリー)は、1892年創業の貴金属の老舗。その名は最高品質のゴールドジュエリーや工芸品と同義であり、本品がGINZA TANAKAの名を冠していることは、その素材の純度、製作の精度において最高水準であることを示唆しています。石黒光南氏のような名工とGINZA TANAKAの組み合わせは、まさに珠玉のコラボレーションと言えるでしょう。
【神々しいまでの「霰」文様】
湯呑みの胴部から蓋にかけてびっしりと打ち込まれた「霰文様」は、日本の伝統的な金工技法の一つ。小さな粒を一つひとつ、寸分の狂いもなく打ち出すには、熟練の技と計り知れない集中力が必要です。この300.4gという重量感のある純金に、これほど均一で美しい霰を施す技術は、まさに神業。光を受けるたびに無数の粒が複雑な陰影を生み出し、黄金の輝きを一層奥深く、荘厳なものにしています。蓋のつまみに施された愛らしい蕾のような意匠も、全体の品格を高めるアクセントとなっています。
【純金という究極の素材】
純金(K24)ならではの山吹色の輝きは、他の何物にも代えがたい圧倒的な存在感を放ちます。手にした時のずっしりとした重み、ひんやりとしながらもどこか温かみを感じる金の肌触りは、所有する喜びを五感で感じさせてくれるでしょう。純金は古来より富と権力の象徴であると同時に、その不変性から永遠性の象徴ともされてきました。この湯呑みは、美術品としての価値はもちろんのこと、貴金属としての資産価値も兼ね備えた逸品です。
【鑑賞する悦び、使う贅沢】
飾っておくだけで空間に神々しいまでの気品と風格をもたらし、見る者の心を豊かに満たしてくれます。実際にこの湯呑みでお茶をいただく時間は、日常を忘れさせてくれる至福のひとときとなることでしょう。大切な方への究極の贈り物として、また、ご自身への最高のご褒美として、代々受け継がれるべき家宝として、これ以上のものは望めないかもしれません。
一期一会とも言える、石黒光南氏作の純金製霰湯呑み。この機会をどうぞお見逃しなく。


以下、所謂ブラクラ妄想ショートショートです~~

稀代の輝き、金の絆
第一章:邂逅と寂寥の霰
古都の片隅に、かつての栄華を偲ばせる屋敷が静かに佇んでいた。綾小路沙羅(あやのこうじ さら)、二十六歳。その旧家の血を引く彼女の瞳には、没落の影と、諦観にも似た寂しさが揺蕩っていた。父は事業に失敗し、数年前に他界。継母である巴(ともえ)は、屋敷と僅かな財産を切り売りしては派手な生活を続け、沙羅の心労は絶えなかった。そんな彼女の唯一の心の慰めであり、同時に重荷でもあったのが、祖父・周五郎(しゅうごろう)の形見である純金製の霰湯呑みだった。
それは、GINZA TANAKAの名を冠し、人間国宝級と謳われた金工作家・石黒光南の手によるもの。三百グラムを超える純金は、ずしりとした生命の重みを感じさせ、表面を覆う無数の霰粒は、まるで夜空に煌めく星々のように緻密で、神々しいまでの輝きを放っていた。沙羅は幼い頃、病床の祖父がこの湯呑みで白湯を飲む姿をよく眺めていた。湯呑みに注がれた湯気が、金の輝きと混じり合い、幻想的な光景を作り出す。祖父は、その金の温もりが病を和らげると信じていた。そして、沙羅の手を取り、この湯呑みを撫でさせながら言った。「沙羅、この輝きはな、心の眼で見れば、人の真実の姿を映し出す鏡にもなる。そして、この霰の一つひとつが、お前の人生で出会うであろう、かけがえのない縁なのだよ」
その言葉は、今の沙羅にとって、遠い夢物語のように虚しく響くこともあった。屋敷には借金取りの男たちが時折顔を出し、巴は金目のものを探しては沙羅に当たり散らす。あの湯呑みだけは、沙羅が祖父の部屋の奥深くに隠し、決して手放そうとはしなかった。それは、綾小路家の最後の誇りであり、沙羅自身の魂の一部であるかのように感じられたからだ。
ある雨の午後、沙羅は馴染みの古美術店「觀古堂(かんこどう)」を訪れていた。僅かな着物を売って、当座の生活費を工面するためだった。店の奥から現れたのは、いつもの老店主ではなく、その息子だという青年だった。名を、橘蓮(たちばな れん)という。年の頃は沙羅とそう変わらないだろうか。黒檀のような艶のある髪、切れ長の涼やかな目元、そして何よりも、古美術品を見つめる真摯な眼差しが印象的だった。
「これは…素晴らしい辻が花ですね。母上の形見ですか」
蓮の声は、落ち着いていて、どこか包み込むような響きがあった。沙羅は小さく頷く。
「ええ…少し、入り用でして」
蓮は沙羅の困窮を察したのか、それ以上は何も聞かず、丁寧に着物を査定した。その手つきは、物に込められた時間や人の想いを慈しむかのようで、沙羅は少しだけ心が和むのを感じた。
取引が終わり、沙羅が店を出ようとした時、蓮がふと声をかけた。
「あの…もし、ご迷惑でなければ、お宅に何か、古いお道具などはございませんか? 父が体調を崩しておりまして、私が少しでも目利きを鍛えたいと思い、色々なものを拝見させて頂きたいのです」
その申し出は唐突だったが、蓮の真剣な瞳に嘘は感じられなかった。あるいは、この青年ならば、祖父の湯呑みの真価を理解してくれるかもしれない。そんな淡い期待が沙羅の胸に芽生えた。しかし、同時に、あの湯呑みを他人の目に触れさせることへの怖れもあった。巴に知られれば、即座に売り払われてしまうだろう。
「…少し、考えてみます」
そう答えるのが精一杯だった。蓮は残念そうな表情を浮かべたが、深追いはせず、「いつでもお待ちしております」と穏やかに微笑んだ。その笑顔が、妙に沙羅の心に残った。
屋敷に戻ると、案の定、巴が不機嫌な顔で待ち構えていた。
「どこをほっつき歩いていたの! 金策はどうなったのよ!」
甲高い声が沙羅の鼓膜を刺す。沙羅は黙って僅かな金を差し出すと、巴はそれをひったくるように奪い、舌打ちをして自室へ戻っていった。嵐のような静けさが訪れる。沙羅は深いため息をつき、祖父の部屋へと向かった。
桐の箱に納められた湯呑みを取り出す。ひんやりとした金の感触が、沙羅の火照った頬に心地よかった。窓から差し込む夕暮れの光が、湯呑みの表面を滑り、霰の一つひとつを黄金色に染め上げる。それはまるで、無数の小さな太陽が寄り集まっているかのようだった。沙羅は湯呑みを両手で包み込み、そっと唇を寄せた。金属の冷たさと、微かに残る祖父の温もりのようなものが、彼女の乾いた心に沁み込んでいく。
「おじい様…私、どうすればいいの…」
涙が、霰の凹凸を伝って流れ落ちた。その時、ふと、蓮の顔が脳裏をよぎった。彼の、あの真摯な瞳。もし彼なら…? いや、駄目だ。誰にも渡してはいけない。これは、私の最後の砦なのだから。
その夜、沙羅は夢を見た。金色の光に包まれた湯呑みが、彼女の手の中で脈打っている夢だった。その鼓動は温かく、力強く、沙羅の全身に生命力を注ぎ込むかのようだった。そして、湯呑みの中から、蓮の声が聞こえた。「沙羅さん、その輝きを信じて…」
翌日、沙羅は迷いを振り払うように、蓮に連絡を取った。
「あの…もしよろしければ、一度、家に来ていただけませんか。ご覧いただきたいものが、一つだけ…あるのです」
電話の向こうで、蓮の安堵したような息遣いが聞こえた。
蓮が綾小路の屋敷を訪れたのは、数日後の雨上がりの午後だった。巴は運良く外出しており、屋敷は静まり返っていた。沙羅は蓮を客間に通し、緊張しながら桐の箱を差し出した。
「これです…祖父の、形見で」
蓮は恭しく箱を受け取り、ゆっくりと蓋を開けた。その瞬間、彼の目が驚きに見開かれ、そしてすぐに深い感嘆の色を帯びた。
「これは…! 石黒光南…しかも、これほどの重量と見事な霰…素晴らしい…!」
蓮は指先でそっと湯呑みに触れた。その触れ方は、まるで聖なる遺物に接するかのようだった。沙羅は、自分の宝物を理解してくれる人間に出会えたことに、小さな喜びを感じていた。
「これほどの逸品が、まだ世に埋もれていたとは…」蓮は感嘆の声を漏らしながら、湯呑みを様々な角度から眺めている。その真剣な横顔を見つめながら、沙羅の胸には複雑な感情が渦巻いていた。安堵と、誇らしさと、そして微かな不安。
「もし…もし、これを手放すとしたら、どれくらいの価値があるのでしょうか」
沙羅は恐る恐る尋ねた。蓮は湯呑みから目を離さずに答えた。
「価値、ですか…金銭的な価値を申せば、おそらく綾小路家の現在の苦境を救うに足るものでしょう。しかし、美術品としての価値、そして何よりも、お祖父様の想いが込められたこの湯呑みの価値は、値段などつけられるものではありません」
その言葉は、沙羅の心を深く打った。金銭的な価値だけでなく、その奥にあるものを見てくれる蓮の言葉に、沙羅は救われたような気がした。
「実は…」沙羅はぽつりぽつりと、家の事情や継母のこと、そしてこの湯呑みが自分にとってどれほど大切なものであるかを語り始めた。蓮は黙って耳を傾け、時折、優しい眼差しで沙羅を見つめた。彼の前では、なぜか素直に自分の気持ちを吐露できるような気がした。
話終えると、蓮は静かに言った。
「沙羅さん、この湯呑みは、あなたが守り抜くべきものです。そして、いつか、あなたが心から納得できる形で、その価値を世に示す時が来るかもしれません。それまでは、私が陰ながらお力になれれば…」
「橘さん…」
「蓮、と呼んでください」
蓮は微笑んだ。その笑顔に、沙羅の心は温かく解けていくのを感じた。
「蓮さん…ありがとうございます」
その時、玄関の方で物音がした。巴が帰ってきたのだ。沙羅は慌てて湯呑みを箱にしまおうとした。
「見られてはまずいのです!」
蓮は素早く立ち上がり、沙羅の手から箱を受け取ると、自分の鞄の奥深くにそれを隠した。
「私が預かりましょう。あなたの部屋よりも安全です。そして、いつでもお返しします」
その言葉には有無を言わせぬ力があった。沙羅は一瞬ためらったが、蓮の真摯な瞳を信じることにした。
巴が客間に入ってきた時、蓮は平然と茶を啜っていた。
「あら、お客様? 沙羅、紹介してちょうだい」
巴の探るような視線が蓮に向けられる。
「觀古堂の橘蓮さんとおっしゃいます。父の代からお世話になっている古美術商の方です」
沙羅は当たり障りのない説明をした。蓮はにこやかに巴に挨拶し、しばらく美術談義に花を咲かせた後、何事もなかったかのように屋敷を辞去した。
蓮が去った後、沙羅の胸には、湯呑みを預けてしまったことへの後悔と、蓮への信頼感が入り混じった複雑な感情が残った。しかし、それ以上に、久しぶりに感じた安堵感と、仄かな期待が心を占めていた。湯呑みの金の輝きが、蓮という存在を通して、彼女の灰色の日常に一条の光を投げかけたかのようだった。
その夜、沙羅は蓮に預けた湯呑みのことを想った。自分の手元にない寂しさと同時に、安全な場所にあるという安心感。そして、蓮の指が湯呑みに触れた時の、あの官能的とも言えるような丁寧な手つきを思い出し、顔が微かに火照るのを感じた。湯呑みの霰の一つひとつが、蓮との出会いという新たな縁を示しているのだろうか。祖父の言葉が、今になって重みを増して沙羅の心に響いていた。冷たい夜の空気に、金の温もりが恋しかった。
第二章:揺れる心と金の重み
湯呑みを蓮に預けてから数日、沙羅の心は奇妙な落ち着きと、新たな緊張感に包まれていた。巴の詮索の目から解放された安堵は大きかったが、同時に、綾小路家の宝を他人に委ねたという事実が、時折重くのしかかった。しかし、蓮から時折届く、湯呑みの様子を伝える短い手紙や、さりげない気遣いの言葉が、沙羅の不安を和らげてくれた。手紙には、湯呑みの霰模様が光の加減でいかに表情を変えるか、その純金の色合いがいかに深いかなど、蓮の美術品への愛情が滲み出ており、沙羅はそれを読むたびに、蓮になら任せて大丈夫だという思いを強くした。
蓮は、ただ湯呑みを預かるだけでなく、沙羅の身の上を案じ、何かと手助けを申し出てくれた。時には、觀古堂の仕事を手伝わないかと誘ってくれることもあった。父亡き後、社会との接点を失いかけていた沙羅にとって、それは新鮮な刺激であり、蓮の優しさが身に染みた。蓮の父、觀古堂の老店主である橘宗一郎(そういちろう)もまた、沙羅を温かく迎え入れてくれた。宗一郎は病身ではあったが、その眼光は鋭く、沙羅が綾小路家の娘であること、そして彼女が持つ品格を見抜いているようだった。
「沙羅さん、蓮から話は聞いている。あの湯呑みは、お祖父様の魂そのものだ。大切になさい」
宗一郎の言葉は、沙羅に勇気を与えた。
沙羅は、蓮の誘いを受け、週に数回、觀古堂で働くようになった。古美術品に囲まれ、その歴史や謂れを学ぶ日々は、沙羅の沈んでいた心に少しずつ活力を与えていった。蓮は、時に厳しく、時に優しく、沙羅に古美術の知識を教えた。彼の指先が、古い陶器の肌を滑る様子、漆器の艶を確かめる仕草、その一つひとつが沙羅には美しく見えた。そして、休憩時間に二人で飲むお茶は、格別な味がした。湯呑みの話をする時、蓮の目は一層輝きを増し、沙羅はその表情を見るのが好きだった。
「この間、月明かりの下で湯呑みを見たんだ。霰の一つひとつが、まるで小さな月を宿しているようだったよ。沙羅さん、君の瞳も、時々あんな風に輝くね」
蓮の不意の言葉に、沙羅は顔を赤らめた。彼との距離が縮まるにつれ、沙羅の胸には淡い恋心が芽生え始めていた。それは、純金の湯呑みが放つ温かな光のように、じんわりと心を包み込む感情だった。
しかし、平穏な日々は長くは続かない。巴の浪費は止まらず、屋敷の維持はいよいよ困難になっていた。そんな折、沙羅の前に一人の男が現れた。黒川辰五郎(くろかわ たつごろう)と名乗るその男は、恰幅の良い、いかにも金を持っていそうな風貌で、言葉巧みに巴に取り入った。黒川は、美術品コレクターを名乗り、綾小路家にはまだ価値のある品が眠っているのではないかと巴を唆した。
「奥様、もし何かお困りでしたら、私がお力になりますよ。例えば、古い金製品などお持ちではございませんか? 私、特に金工品には目がなくて」
黒川の言葉に、巴の目がギラリと光った。沙羅は嫌な予感を覚えた。巴が湯呑みの存在に気づけば、黒川に売り渡してしまうかもしれない。
沙羅は蓮に相談した。蓮の表情も険しくなった。
「黒川辰五郎…その名、少し聞いたことがある。あまり良い噂ではない。おそらく、価値のある美術品を安く買い叩いたり、時には悪質な手段で手に入れたりする男だ」
蓮はすぐに黒川について調べ始めた。そして、彼の懸念は的中する。黒川は、いわゆる「悪徳コレクター」として裏社会では名の知れた存在だったのだ。
その頃、蓮の周辺にも不穏な動きがあった。橘家は古都でも有数の旧家であり、觀古堂の経営も盤石に見えたが、実は宗一郎の代で大きな負債を抱え、蓮はその立て直しに奔走していた。そして、その負債解消の一環として、有力な財界人の娘である高遠美緒(たかとお みお)との縁談が進められていたのだ。美緒は美しく聡明な女性だったが、蓮にとっては政略結婚の相手でしかなかった。しかし、家の将来を考えれば、無碍に断ることもできない。
沙羅はその噂を人づてに聞き、胸が締め付けられるような痛みを覚えた。蓮の苦悩を思うと、自分の気持ちを伝えることなどできなかった。二人の間には、見えない壁が立ちはだかっているかのようだった。
ある雨の夜、沙羅は觀古堂の仕事の帰り、蓮に呼び止められた。
「沙羅さん、少し話があるんだ」
蓮の表情は硬く、いつもの穏やかさはなかった。彼は沙羅を店の奥の茶室へと導いた。そこには、あの純金の湯呑みが静かに置かれていた。雨音だけが響く空間で、湯呑みの黄金色がぼんやりと浮かび上がっている。
「この湯呑みを見ていると、心が落ち着くんだ。君のことを思い出すからかもしれない」
蓮はそう言って、湯呑みを手に取った。その指先が、霰の凹凸を確かめるようにゆっくりと滑る。沙羅は、その仕草から目を離せなかった。
「黒川の件だが、やはり警戒が必要だ。巴さんを丸め込んで、君から湯呑みを奪おうとするだろう」
「…どうすれば」
沙羅の声は震えていた。
「僕が必ず守る。だから、安心してほしい」
蓮は湯呑みを沙羅の手にそっと乗せた。ずしりとした重み。ひんやりとした金の感触。それが、なぜか今の沙羅には蓮の温もりとして感じられた。
「蓮さん…あなたの縁談のこと、聞きました」
沙羅は意を決して口にした。蓮は一瞬目を見開いたが、すぐに悲しげな表情を浮かべた。
「…家のための、話だ。僕の気持ちとは関係ない」
「でも…」
「沙羅さん」
蓮は沙羅の手を、湯呑みごと自分の両手で包み込んだ。その手は熱く、力強かった。
「僕が本当に大切にしたいのは、君だ。この湯呑みが繋いでくれた縁を、僕は決して手放したくない」
蓮の真剣な眼差しが、沙羅の心の奥底まで見透かすようだった。雨音が一層強くなる。狭い茶室の中で、二人の吐息だけが聞こえる。蓮の顔がゆっくりと近づいてきた。沙羅は目を閉じる。初めての口づけは、雨の匂いと、微かなお茶の香りがした。そして、手のひらに感じる純金の冷たさと、蓮の肌の熱さが、沙羅の全身を震わせた。それは、甘く切ない、禁断の果実の味だった。
その口づけは、二人の絆を深めると同時に、新たな苦悩の始まりでもあった。蓮には許嫁がおり、沙羅には家の問題と黒川の影が迫っている。湯呑みの黄金の輝きは、二人の未来を照らす希望の光なのか、それとも、さらなる試練へと誘う危険な煌めきなのか。沙羅にはまだ、それが分からなかった。ただ、蓮の温もりと、あの湯呑みの重みだけが、確かなものとして彼女の心に刻み込まれていた。霰の一つひとつが、これから起こるであろう出来事の予兆であるかのように、静かに輝き続けていた。
第三章:試練の霰、覚悟の炎
蓮との秘密の口づけの後、沙羅の世界は一変した。心の奥底で燃え始めた恋の炎は、彼女に生きる力を与えると同時に、言いようのない不安をもたらした。蓮への想いが募るほど、彼の許嫁である高遠美緒の存在が重くのしかかり、そして、綾小路家を虎視眈々と狙う黒川辰五郎の影は、日増しに濃くなっていった。
巴は黒川の甘言にすっかり籠絡され、屋敷にある金目のものを次々と彼に売り渡していた。沙羅が隠していた僅かな装飾品も、いつの間にか巴の手に渡り、黒川のもとへ流れていった。巴の関心は、ついにあの純金の湯呑みに向き始めた。
「沙羅、お祖父様の部屋に、何か隠しているでしょう? 金色の、重たいものだって聞いたわよ。黒川様が高く買ってくださるそうだから、早く出しなさい」
巴の目は血走り、まるで獲物を狙う獣のようだった。沙羅は毅然と拒否したが、巴の執拗な追及は続き、屋敷の中は常に不穏な空気に満ちていた。
蓮は、沙羅を守るため、そして黒川の悪事を暴くために奔走していた。彼は古美術界の知人や、時には裏社会にも通じる情報屋を使い、黒川の過去の悪行の証拠を集め始めた。それは危険な作業であり、沙羅は蓮の身を案じずにはいられなかった。
そんな中、沙羅は祖父・周五郎が遺した日記を見つけ出した。埃をかぶったそれは、祖父の部屋の古い箪笥の奥深くに隠されていた。日記には、若き日の祖父の苦悩や喜び、そしてあの純金の湯呑みにまつわる意外な事実が記されていた。湯呑みは、元々、祖父が若き日に愛した女性、しかし身分違い故に結ばれなかった相手への、叶わぬ想いを込めて特注したものだったのだ。その女性は病弱で、祖父は彼女の健康を願い、純金にその力を託そうとした。霰模様は、その女性が好きだった夜空の星をイメージしたものだったという。そして、日記の最後には、こう記されていた。
「この湯呑みは、真実の愛を知る者の手に渡り、その輝きを増すだろう。そして、いつか、綾小路の血を引く者が、真に守るべきものを見つけた時、この湯呑みは最大の力を発揮する」
沙羅は涙ながらに日記を読んだ。祖父の秘められた恋、湯呑みに込められた深い想い。それは、今の自分の状況と重なり、沙羅の胸を締め付けた。蓮への愛は真実なのか? 自分は、この湯呑みを、そして綾小路家を守り抜くことができるのか?
蓮との逢瀬は、人目を忍ぶように続けられた。觀古堂の奥の茶室や、時には人気のない神社の境内。短い時間の中で、二人は互いの温もりを確かめ合い、不安を分かち合った。蓮の指が沙羅の髪を優しく梳き、その唇が沙羅の首筋に触れるたび、沙羅の身体は甘く疼いた。それは、危険な香りを伴う、刹那的な陶酔だった。
「沙羅…君を失いたくない。どんな手を使っても、君とこの湯呑みを守る」
蓮の言葉は力強かったが、その瞳の奥には深い苦悩の色が浮かんでいた。高遠美緒との婚約は、彼の家の運命を左右するものであり、破棄することは容易ではなかった。
ある日、高遠美緒が觀古堂を訪れた。彼女は蓮の許嫁として、店の様子を見に来たのだという。美緒は、気品があり、知的な美貌の持ち主だった。沙羅は、従業員の一人として、彼女に茶を出すことになった。美緒の鋭い視線が、沙羅を一瞬捉えた。その目に浮かんだのは、嫉妬だろうか、それとも単なる好奇心だろうか。沙羅は平静を装ったが、心臓は激しく高鳴っていた。
「蓮さんとは、もう長いの?」
美緒の問いかけは、さりげないようでいて、沙羅の心を探るようだった。
「いえ…私は、こちらでお世話になり始めてまだ日が浅いので」
沙羅は言葉を選びながら答えた。美緒はふっと微笑んだが、その笑みはどこか冷ややかに感じられた。
その夜、蓮から緊急の連絡があった。
「黒川が動いた。巴さんを唆して、今夜にも君の部屋に押し入るつもりらしい。すぐに湯呑みを持って逃げるんだ!」
沙羅は血の気が引くのを感じた。しかし、湯呑みは蓮が預かっているはずだ。
「蓮さん、湯呑みはあなたが…」
「ああ、そうだ。だが、黒川は君が持っていると思い込んでいる。そして、万が一の事態に備えて、君にこれを渡しておきたい」
電話の向こうで、蓮の切迫した声が響く。
沙羅が指定された場所へ向かうと、そこには息を切らした蓮が待っていた。彼は沙羅の手に、ずしりと重い包みを握らせた。それは、あの純金の湯呑みだった。
「なぜ…!?」
「黒川の注意をこちらに引きつける。その間に君は安全な場所へ。宗一郎も承知している。これは僕の覚悟だ」
蓮の瞳は、決意の炎に燃えていた。しかし、沙羅は首を横に振った。
「嫌です。あなたを一人で行かせるわけにはいきません。それに、これは私が守るべきものです。お祖父様の想いが、そして…私たちの想いが込められているのですから」
沙羅の声は震えていたが、その瞳には強い意志が宿っていた。祖父の日記を読んだことで、彼女の中で何かが変わったのだ。
「沙羅…」
蓮は沙羅の覚悟に言葉を失った。
「一緒に行きましょう。そして、黒川の企みを阻止するのです。この湯呑みが、私たちに力を貸してくれるはずです」
沙羅は湯呑みを固く握りしめた。ひんやりとした金の感触が、彼女の決意を後押しするようだった。霰の一つひとつが、まるで小さな盾のように、彼女を守ってくれるかのように感じられた。
二人は綾小路の屋敷へと急いだ。屋敷の門前には、黒川の手下らしき男たちが数人、見張りをしていた。裏口からこっそりと屋敷に忍び込むと、巴の甲高い声と、黒川のねっとりとした声が聞こえてきた。
「奥様、娘さんさえ説得していただければ、あの湯呑みは私が高値で買い取りますよ。そうすれば、当座のお金には困らないでしょう?」
「ええ、ええ、あの子も頑固で困りますわ。でも、必ずや…」
沙羅と蓮は、物音を立てないように慎重に客間へ近づいた。襖の隙間から中を覗うと、黒川が巴に札束を見せびらかし、巴が卑しい笑みを浮かべているのが見えた。沙羅の胸に怒りが込み上げてくる。
「今だ!」
蓮の合図で、二人は客間に踏み込んだ。
「そこまでです、黒川さん!」
沙羅の凛とした声が響き渡る。黒川と巴は驚愕の表情で二人を見つめた。
「沙羅! あんた、何を…!?」
巴が金切り声を上げる。
「母様、もう騙されるのはおやめください! この男は、綾小路家を食い物にしようとしているだけです!」
沙羅は黒川を睨みつけた。黒川は一瞬動揺したが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「ほう、お嬢ちゃん、なかなか威勢がいいじゃないか。だが、証拠でもあるのかね?」
その時、蓮が前に進み出た。
「証拠なら、ここにありますよ、黒川さん」
蓮は、黒川が過去に行った詐欺まがいの取引の証拠書類の束を突きつけた。それは、蓮が危険を冒して集めたものだった。黒川の顔色が変わる。
「な、なんだこれは…でっち上げだ!」
「警察にも通報済みです。あなたの悪事もこれまでですよ」
蓮の言葉に、黒川は狼狽の色を隠せない。
しかし、黒川はそう簡単には諦めなかった。彼は懐から小さな刃物を取り出し、巴の首筋に突きつけた。
「動くな! さもないと、この女の命はないぞ!」
巴は恐怖に顔を引きつらせ、悲鳴を上げた。沙羅は息を呑んだ。
「母様!」
「お嬢ちゃん、その金の湯呑みを渡せ。そうすれば、この女は見逃してやる」
黒川の目が、沙羅の持つ湯呑みに釘付けになる。それは、欲望に歪んだ、醜い光を放っていた。
沙羅は一瞬ためらった。しかし、彼女の瞳には、もはや迷いはなかった。彼女はゆっくりと湯呑みを黒川の方へ差し出そうとした。その瞬間、蓮が動いた。彼は目にも留まらぬ速さで黒川に飛びかかり、その腕を捻り上げた。刃物が床に落ち、甲高い音を立てる。
「ぐわっ!」
黒川が苦痛の声を上げる。その隙に、沙羅は巴を助け起こした。
「蓮さん!」
「大丈夫だ、沙羅さん!」
蓮は黒川を押さえつけながら叫んだ。その時、玄関の方から複数の足音が聞こえてきた。警察が到着したのだ。黒川は観念したようにうなだれ、手下たちも次々と捕らえられていった。
嵐のような騒動が終わり、静けさが戻った客間で、沙羅は湯呑みを胸に抱きしめていた。金の冷たさが、高鳴る鼓動を鎮めてくれるようだった。巴は、茫然自失の体で座り込んでいたが、やがて沙羅の方へ向き直り、深々と頭を下げた。
「沙羅…許してくれ…私は、目が眩んでいた…」
その言葉は、沙羅の心に複雑な思いをもたらしたが、今はただ、全てが終わった安堵感の方が大きかった。
蓮は、沙羅のそばに寄り添い、そっとその肩を抱いた。
「よく頑張ったね、沙羅さん」
その声は優しく、沙羅の張り詰めていたものが一気に解けていくのを感じた。涙が溢れ出し、沙羅は蓮の胸に顔を埋めて泣いた。蓮は何も言わず、ただ沙羅の背中を優しく撫で続けていた。
純金の湯呑みは、沙羅の手の中で、確かな重みと温もりを伝えていた。その霰の一つひとつが、試練を乗り越えた証のように、力強く輝いている。祖父の言葉が再び沙羅の脳裏に蘇る。「真に守るべきものを見つけた時、この湯呑みは最大の力を発揮する」。沙羅は、守るべきものを見つけたのだ。それは、綾小路家の誇りであり、蓮への愛であり、そして何よりも、自分自身の未来だった。金の輝きが、彼女の覚悟の炎と重なり合い、新たな始まりを告げていた。
第四章:解ける糸、夜明けの霰光
黒川辰五郎の一件が片付いた後、綾小路家には束の間の静寂が訪れた。しかし、それは嵐の前の静けさにも似て、沙羅と蓮の前にはまだ解決すべき問題が山積していた。巴は自らの過ちを深く反省し、沙羅に対しては以前のような棘のある態度は見せなくなったものの、長年の浪費癖が残した負債は大きく、屋敷の将来は依然として不透明だった。
そして、蓮には高遠美緒との婚約問題が重くのしかかっていた。黒川逮捕の際、蓮が沙羅を庇い、二人の間にただならぬ関係があることを美緒は敏感に察知していた。美緒の父、高遠総一郎は橘家の最大の債権者であり、この婚約は橘家の再興に不可欠なものとされていた。蓮の父・宗一郎も、息子の気持ちを理解しつつも、家の存続のためには美緒との結婚を諦めるわけにはいかないという苦しい立場だった。
沙羅は、蓮の苦境を思うと胸が痛んだ。自分たちの愛が、蓮を追い詰めているのではないか。そんな罪悪感に苛まれることもあった。しかし、あの純金の湯呑みを守り抜いた経験は、沙羅に強さと、諦めない心を与えていた。彼女は、蓮と共に未来を切り開くことを固く決意していた。
ある日、沙羅は意を決して高遠美緒に会う約束を取り付けた。場所は、市内の静かなホテルのラウンジ。美緒は約束の時間きっかりに現れた。相変わらずの気品と、どこか挑戦的な光を宿した瞳で沙羅を見つめる。
「橘さんとのこと、お聞きしたいことがありますの」
美緒は単刀直入に切り出した。
「…蓮さんとは、真剣にお付き合いをさせていただいております」
沙羅は臆することなく答えた。
「ご存じのはずですわ。彼と私の婚約は、橘家にとってどれほど重要なものか。あなたは、彼の未来を奪うおつもり?」
美緒の言葉は鋭く、沙羅の心を抉った。しかし、沙羅は怯まなかった。
「私は、蓮さんの重荷になりたいわけではありません。ただ、彼と共に歩みたいと願っているだけです。そして、蓮さんも同じ気持ちだと信じています」
「信じるだけでは、現実は変わりませんわ」
美緒は冷ややかに言い放った。
その時、沙羅はバッグからあの純金の湯呑みを取り出した。テーブルの上に置かれた湯呑みは、ラウンジの柔らかな照明を受けて、温かな黄金色の光を放った。美緒の目が、驚きと興味の色を浮かべて湯呑みに注がれる。
「これは…?」
「綾小路家に代々伝わる、純金の湯呑みです。石黒光南の作です。私の祖父は、この湯呑みに、真実の愛の力を信じていました」
沙羅は、祖父の日記に書かれていた湯呑みの由来と、そこに込められた想いを語り始めた。身分違いの恋、叶わぬ願い、そして、真実の愛を見出す者への祝福。それは、美緒にとっても他人事ではない話かもしれなかった。なぜなら、美緒もまた、蓮を愛しているからだ。たとえそれが、政略という形から始まったものであったとしても。
沙羅の話を聞き終えた美緒は、しばらく黙って湯呑みを見つめていた。その表情は複雑で、読み取ることは難しかった。やがて、彼女は深いため息をつき、口を開いた。
「…美しい湯呑みですわね。そして、馬鹿げたほどに純粋な物語。でも、羨ましいとも思います」
その言葉には、これまで沙羅が感じていたような棘はなかった。
「私は、蓮さんを愛しています。でも、私の愛は、いつも何かと引き換えでした。家の名誉、父の期待、そして、彼を手に入れるための打算。あなたのようには、なれませんでしたわ」
美緒の瞳に、初めて涙が滲んだ。それは、彼女がずっと隠してきた孤独と悲しみの色をしていた。
沙羅は、美緒の手をそっと握った。
「美緒さんも、本当は、純粋な愛を求めていらっしゃるのではありませんか?」
美緒は驚いたように沙羅を見たが、やがて小さく頷いた。
「…もし、私がこの婚約を解消したら、あなたは蓮さんを本当に幸せにできますの?」
それは、試すような、それでいてどこか期待するような響きを持っていた。
「約束します。彼と共に、どんな困難も乗り越えてみせます」
沙羅は力強く答えた。湯呑みの霰の一つひとつが、まるで二人の女性の心の機微を映し出すかのように、繊細な光を放っていた。
その会談の後、美緒は父・高遠総一郎に、蓮との婚約を解消したいと申し出た。総一郎は激怒したが、娘の固い決意と、そして何よりも彼女の瞳に宿る真実の想いを前に、最終的には折れざるを得なかった。それは、高遠家にとっても大きな決断だったが、美緒は自分の手で掴み取った自由と、新たな未来への希望を感じていた。
蓮は、美緒の決断を知り、驚きと感謝の念でいっぱいになった。彼はすぐに美緒のもとを訪れ、心からの感謝と、そして友人としての変わらぬ敬意を伝えた。美緒は、吹っ切れたような笑顔で蓮を送り出した。
橘家では、この知らせは大きな波紋を呼んだ。宗一郎は、息子の恋が成就したことを喜びつつも、高遠家との関係悪化や負債問題の解決策が見えなくなったことに頭を悩ませた。しかし、蓮は諦めなかった。彼は、父と共に新たな再建計画を練り直し、觀古堂の伝統を守りつつも、新しい時代のニーズに合わせた経営改革を進めようとしていた。そして、その傍らには、常に沙羅の支えがあった。
沙羅もまた、綾小路家の再興に向けて動き始めていた。巴は、過去の過ちを償うかのように、質素な生活を受け入れ、沙羅の努力を静かに見守っていた。沙羅は、屋敷の一部を改装し、小さな茶房を開くことを計画した。そこで、祖父の愛したお茶と、そしてあの純金の湯呑みの物語を、訪れる人々に伝えたいと考えたのだ。それはささやかな始まりだったが、沙羅にとっては大きな一歩だった。
ある月明かりの美しい夜、沙羅と蓮は、綾小路家の縁側で静かにお茶を飲んでいた。目の前には、あの純金の湯呑みが置かれ、月光を浴びて神秘的な輝きを放っている。霰模様の一つひとつが、まるで宇宙の星々のように、無限の広がりを感じさせた。
「沙羅…ありがとう。君がいなければ、僕はここまで来られなかった」
蓮は、沙羅の手を優しく握った。その手は温かく、沙羅の心を安心感で満たした。
「ううん。私の方こそ、蓮さんのおかげで、前を向くことができました。この湯呑みが、私たちを導いてくれたのかもしれませんね」
沙羅は微笑み、湯呑みにそっと触れた。金の冷たさが、今は心地よい刺激となって肌に伝わる。
蓮は沙羅の肩を引き寄せ、その唇に優しく口づけた。それは、以前のような切なさや焦燥感はなく、穏やかで、深い愛情に満ちたものだった。湯呑みの金の輝きが、二人のシルエットを柔らかく照らし出す。
「沙羅、結婚しよう」
蓮の言葉は、静かで、しかし確かな響きを持っていた。沙羅の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。それは、喜びと感謝の涙だった。
「はい…喜んで」
純金の湯呑みは、まるで二人の誓いを見守るかのように、静かに輝き続けていた。その霰の一つひとつに、これまでの苦難と、そしてこれからの希望が刻まれているかのようだった。複雑に絡み合っていた人間関係の糸は、少しずつ解きほぐされ、新たな絆が生まれようとしていた。夜明けの空が白み始め、霰の湯呑みが朝の光を浴びて、一層まばゆい黄金色の光を放ち始めた。それは、二人の未来を祝福する、希望の霰光だった。
第五章:黄金色の未来、愛の霰
沙羅と蓮の結婚は、周囲の人々から温かく祝福された。高遠美緒も、晴れやかな笑顔で祝いに駆けつけ、彼女の父・総一郎もまた、過去のわだかまりを水に流し、二人の門出を祝ってくれた。橘家と高遠家の間には、新たな友好関係が築かれようとしていた。巴も、娘の幸せを心から喜び、涙ながらに沙羅の手を握った。綾小路の屋敷は、久しぶりに明るい笑い声に包まれた。
結婚式は、綾小路家の庭園で、親しい人々だけを招いたささやかなものだったが、そこには真心のこもった温かい空気が流れていた。沙羅は、祖母の残した白無垢に身を包み、その姿はまるで純金の湯呑みが放つ清らかな輝きを纏っているかのようだった。蓮は、紋付袴姿で凛々しく、沙羅の隣で幸せそうに微笑んでいた。
誓いの盃は、もちろん、あの石黒光南作の純金製霰湯呑みで交わされた。沙羅と蓮が交互に湯呑みに口をつけるたび、金の輝きが二人の顔を照らし、その重みが、これから始まる新しい人生の確かな手応えを感じさせた。霰の一つひとつが、二人の未来に降り注ぐ幸福の粒であるかのように、きらきらと輝いていた。
結婚後、沙羅は綾小路家の屋敷で茶房「霰月庵(さんげつあん)」を開いた。祖父の愛したお茶と、手作りの和菓子、そして何よりも、あの純金の湯呑みの物語が、訪れる人々の心を惹きつけた。茶房は、静かで落ち着いた時間を求める人々にとって、隠れ家のような存在となり、少しずつ評判が広まっていった。沙羅は、茶房の経営を通して、多くの人々と出会い、新たな縁を紡いでいった。
蓮は、觀古堂の若旦那として、店の改革に精力的に取り組んでいた。彼は、伝統を重んじつつも、インターネットを活用した販売や、若手作家の作品展を企画するなど、新しい風を吹き込んでいった。沙羅の存在は、蓮にとって大きな支えとなり、彼の仕事への情熱を一層掻き立てた。二人は、互いの夢を応援し合い、支え合いながら、充実した日々を送っていた。
数年後、綾小路家の茶房「霰月庵」には、愛らしい赤ん坊の笑い声が響いていた。沙羅と蓮の間に生まれた娘、光希(みつき)だ。光希は、沙羅の穏やかさと蓮の聡明さを受け継ぎ、まるで純金の輝きを宿したかのように愛らしい赤ん坊だった。沙羅は、光希を抱きながら、縁側であの湯呑みを眺めるのが日課となっていた。
ある春の穏やかな午後、沙羅は光希をあやしながら、蓮の帰りを待っていた。茶房の客も一段落し、静かな時間が流れている。縁側には、いつものように純金の湯呑みが置かれ、春の柔らかな陽光を浴びて、優しい黄金色に輝いていた。その霰模様は、まるで無数の小さな花が咲き誇っているかのようだ。
「ただいま、沙羅」
蓮が、優しい笑顔で帰ってきた。彼は仕事の合間を縫って、毎日必ず一度は沙羅と光希の顔を見に帰ってくる。
「おかえりなさい、あなた」
沙羅は微笑み返し、蓮は光希を優しく抱き上げた。光希は、父の腕の中で嬉しそうに声を上げる。
蓮は、沙羅の隣に腰を下ろし、湯呑みを手に取った。
「この湯呑みを見ていると、いつも不思議な気持ちになるんだ。僕たちの出会いも、数々の困難も、そして今のこの幸せも、全てこの湯呑みが導いてくれたような気がして」
蓮は、湯呑みの霰を指でそっと撫でた。その仕草は、初めてこの湯呑みを目にした時と変わらず、深い愛情に満ちていた。
「ええ、本当にそうね。お祖父様の想いが、私たちを守ってくれたのよ」
沙羅は蓮の肩にそっと寄り添った。
蓮は、湯呑みにゆっくりと白湯を注いだ。立ち上る湯気が、金の輝きと混じり合い、幻想的な光景を作り出す。それは、沙羅が幼い頃に見た、祖父の姿と重なった。蓮は、その湯呑みを沙羅に差し出した。
「どうぞ、僕の愛しい沙羅」
沙羅は、蓮の瞳を見つめながら、湯呑みを受け取った。金の温もりが、手のひらから心へと伝わってくる。彼女はゆっくりと白湯を一口含んだ。それは、何よりも甘く、優しい味がした。
次に、沙羅は湯呑みを蓮に差し出した。
「あなたも、蓮さん」
蓮は、沙羅の手から湯呑みを受け取り、同じように白湯を味わった。二人の視線が絡み合い、言葉はなくとも、深い愛情と信頼が通い合っているのが分かった。それは、長年連れ添った夫婦のような、穏やかで満ち足りた時間だった。
光希が、二人の間で小さな手を伸ばし、湯呑みに触れようとする。その無邪気な仕草に、沙羅と蓮は顔を見合わせて微笑んだ。
「この子にも、いつかこの湯呑みの物語を伝えましょうね」
「ああ。そして、この湯呑みが、この子の未来も、明るく照らしてくれることを願って」
純金の湯呑みは、綾小路家と橘家の新たな歴史を見守るように、静かに輝き続けていた。その三百グラムの重みは、受け継がれてきた愛と伝統の重み。無数に打ち込まれた霰の一つひとつが、これからも続いていくであろう家族の幸せな日々と、かけがえのない縁を象徴しているかのようだった。
夕暮れの光が、茶房を黄金色に染め上げる。沙羅と蓮、そして光希。三人の穏やかな時間が、純金の湯呑みの輝きと共に、永遠に続くかのように感じられた。それは、涙が出るほどに温かく、感動的な光景だった。稀代の輝きは、愛という絆によって、未来永劫、その価値を失うことはないだろう。そして、その霰の一つひとつが、愛の結晶として、いつまでもきらめき続けるのだ。ハッピーエンド。それは、黄金色の輝きに満ちた、愛と希望の物語の結末だった。


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