学名:Pyrrhocactus neohankeanus
= Pyrrhocactus taltalensis
= Neoporteria paucicostata var. neohankeana
≒ Eriosyce taltalensis ssp. taltalensis?
≒ Eriosyce paucicostata ?
和名:ヒルホカクタス・ネオハンケアヌス, 国光殿
産地:タルタル, チリ(TALTAL, ANTOFAGASTA Region, CHILE)
株状態:海外実生株
管理期間:約4年
鉢:国産磁器実験用るつぼ(底穴増設)
説明:
ベランダ整理のため、Eriosyce属(エリオシケ属)を出品します。本属は、国内では一部の種を除いて、なかなか入手難な種も多いかと思います。サボテンについては同梱対応しますので、取引メッセージでご連絡ください。
※今週でサボテン株の出品を一旦終了します。
本種は分類学的に混乱している、taltalensis-paucicostata群の1種となります。
まず、F. Ritterの定義したE. taltalensisはTALTAL周辺〜ESMERALDAに分布しており、E. paucicostataはPAPOSO〜北部50kmに分布しています。この間に南北約40kmの距離がありますが、この間に分布するのが本種となります。
この種はpaucicostata系統かと思いますが、taltalensisの要素もあり、過去に交雑している可能性があります。このためか、南部のTALTAL周辺→TALTAL北部→PAPOSO南部にかけて、段々と地域変異していくようです。
過去には、1954年にP. C. HutchisonはESMERALDAからNeoporteria taltalensisを新種記載しますが、1955年にF. RitterはH. Winterカタログで【FR212】をNeoporteria de TALTAL、1956年にはPyrrhocactus taltalensisとして種子を販売します。ただし、こちらはコマーシャルネームで裸名となります。
1966年にC. Backebergは移属して、Neochilenia taltalensisとしますが、こちらは1962年にH. Winterカタログで販売された【FR212】のうち赤花系統を充てました 。一方で、同ナンバーのうち黄色花の系統はNeochilenia hankeana var. taltalensisとしました。なお、【FR212】の産地はN of TALTALとなりますが、当時は非公開となっていました。
実は、F. Ritterはこの【FR212】にPyrrhocactus taltalensisを充てようと考えていましたが、既に1954年に同名で新種記載されてしまったため、1980年にPyrrhocactus neohankeanusの新種記載をしています。
1989年にA. E. HoffmannはNeoporteria paucicostata var. neohankeanaとし、1994年にF. KattermannはE. paucicostataの範囲としました。その後はE. paucicostataか E. taltalensisのどちらの範囲にするのかで論争があるようです。
本種はpaucicostataにしては稜数や刺数が多くなります。また、開花期が初夏となるため、冬季〜春季に開花するtaltalensisとは大きくズレます。また、刺は中間的な形態を示し、花は地域によって花色が白色〜明黄色〜淡桃色〜珊瑚色〜桃色〜赤紫色と変異が大きくなります。
なお、竜胆寺雄や伊藤芳夫の古い図鑑に掲載されているNeochilenia taltalensis、和名「国光殿」とは本系統の淡黄色型を指しており、ESMERALDAをタイプ産地とする真のtaltalensisとは異なります。
これは、どのサボテンにも言えるのですが、時代と共に変化する分類学的な見解はさておき、少なくとも見た目が異なるので、園芸上は分けておいた方が良いかと感じます。学名は時代と共に、分割統合しますので、より細かく分類されたラベルを持っていた方が無難です。
本株はTALTAL産のPyrrhocactus taltalensis名義で海外から4年前に入手しており、形態と開花時期から、産地不明ですがPyrrhocactus neohankeanusかと特定出来ます。中型サイズで、地色は黒紫色で比較的密な黒色の刺を備えています。花色は淡い桃色にやや濃い中筋が入り、初夏咲きとなります。まだまだ大型化しますので、上手に育てていただければと思います。
<Eriosyce属について>
・南米のEriosyce属(エリオシケ属)は、もともとEriosyce, Islaya, Pyrrhocactus, Horridocactus, Neochilenia, Thelocephala, Chileorebutia, Neoporteria等に割れており、所属する種の移動も激しい状態でしたが、1994年F. Kattermannにより、これら全てをEriosyce属に統合する説が提唱されています。同じ種が色々な属名で売られているのは、このためです。現在までも、分類学的にはこの考え方は概ね支持されており、遺伝子解析の結果もこの概念を支持していますので、当面は分類学的にはEriosyce1属主義が続くでしょう。
・種レベルの同定も特徴が掴みづらく、札落ちした株の同定は苦労することもしばしば。開花しないと判然としないものが、かなりあります。残念ながら、国内外のナーセリーで売られている株にも、一定数誤同定が混ざっていますので、油断ができません。数年後に花を見て、同定が間違っていたことに気づくことも良くあります。
・分類学的な混乱も甚だしく、約800のシノニム(同物異名)があり、どの種がどの種のシノニムなのかを調べるのが一苦労で、網羅的な日本語の解説書は存在しません。このため各種の正体を調べようとすると、それなりに海外学術文献を読み解かないと、その実態が掴めません。また、栽培面でも気難しい種が多いことから、とっつきにくさがあるかと思いますし、国内でイマイチ流行らない理由の一つかもしれません。
・一方で、非常に多様な姿でありながら、上手に育てればシックでバランスの良い姿となり、大振りでありながら派手すぎない絶妙なカラーの花などが特筆に値するかと思います。同じ種内でも地域や個体によるバリエーションも多いことから、同地域に生育する大人気のCopiapoa属とは、また違った魅力があるかと思いますし、殆どが中小型なこともあり、日本の住宅事情にも優しいかと思います。