谷口山郷（たにぐち さんごう）
基本プロフィール
本名：文男
生年／没年：1914年（大正3年）〜 2000年（平成12年）4月26日
出身地：富山県下新川郡南保村（現在の朝日町 蛭谷）
没地：富山県朝日町

経歴と画業
若い頃は父とともに炭焼きを行いながら独学で絵を描き始めた。
1933年（およそ19歳のとき）に上京し、まず 太平洋美術学校 で洋画を学ぶ。その後、 川端画学校 に転じ、日本画を専攻した。ここで同校に在籍していた画家 岩崎巴人 と出会う。
1937年に召集され、終戦までの約8年間、中国大陸を転戦。この間も密かにスケッチを続けていた。
戦後、富山に復員。1948年には地元で中学校の美術教諭となり、本格的な制作を再開。
1952年、 新興美術展（再興第2回）に「赤い山」を出品して入選。以降も「残雪の山」「雪崩」などを同展に次々出品し、1955年の第5回展で努力賞、1956年の第6回展で会員推挙を受けた。
1958年、岩崎巴人、 長崎莫人 らとともに 日本表現派 を結成。第1回展は東京渋谷の東横百貨店で「孤岩」「師走の空」などを発表。
1967年、日本表現派を退会。その後はどの団体にも属さず、独自の創作活動を続けた。
1974年、朝日町東草野に転居。この地を拠点に “廃家シリーズ” を描き始めた。
1992年、地元で回顧展「異端の日本画家三人展」が開催され、その画風・業績が振り返られた。
2000年に86歳で没。

作風・主な作品・画風の特徴
代表作には「赤い山」「残雪の山」「雪崩」「凍天」「雪の夜」「寂夜」「天の川」「雪崩れる山」「山塊」「暮雪」「孤岩」「師走の空」など多数。
日本表現派として所属していた当時は、伝統的な日本画の技巧に捉われず、「自然との共生」「東洋的観照性」を重視。写生に頼らず印象や感動を重視し、太く荒々しい描線をもって“水墨を基調にした南画的フォーヴ”とも評された。力強く、野性味のある作風
後年は「廃屋シリーズ」など、廃墟や朽ちた建物などをモチーフに、時間の流れやそこにあった人々の営みの痕跡を描くことにも取り組んだ。地域への郷愁や記憶、朽ちゆくものへの眼差しといったテーマが感じられる作品群。

意義・評価
戦後の日本画界における「革新」と「伝統」のせめぎ合いの中で、写生に頼らない自由な表現と東洋的感性を追求した画家のひとりとされる。特に日本表現派の結成によって、その思想とスタイルを提示した。
地元・富山県と強く結びつき、自然や風土、あるいは時の経過をテーマに据えた作風は、独自性があり、地方出身画家ながらしっかりとした画業を築いた。
現在も彼の作品は掛軸や日本画として流通することがあり、あなたのように絵画を扱う事業をされている方にとって、一定の魅力と価値を持つ画家。



表具寸法（軸先含む）★約97×205
本紙寸法★約68×134


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