特集 浄化と再生の風呂 隔月刊インテリア・マガジン コンフォルト CONFORT
2000年6月号 No.42
Peter Zumthor Therme Vals ピーター・ズントー スイスの温泉浴場施設 テルメヴァルス 写真解説 ペーター・ツムトア
イームズ夫妻自邸 剣持勇世界に通用するジャパニーズ・モダン 建築デザイン インテリアデザイン
建築資料研究社
2000年
159ページ
約30x23.5x1cm
フルカラー
※絶版
※日本では一般にピーター・ズントーと広く知られていますが、
本書ではペーター・ズムトーとなっています(ほかに、ペーター・ツムトア、ペーター・ツムトーアなど表記に幅があります)
ピーター・ズントー建築作品の中でも最高傑作と名高い、
スイスの温泉浴場施設、テルメヴァルス特集記事15ページ。
スイスの自然風景に溶け込む外観、屋内メインの大浴場、屋外浴槽への通路、天井、ピーター・ズントーデザインの寝椅子が配置された休憩スペース、泉の洞窟、
断面図・浴場階平面図、ピーター・ズントーデザインのホテル客室内装インテリア、屋外の大浴槽、夜の屋外浴槽など、厳選された美しい写真のほか、
テルメヴァルス管理委員長インタビュー、マネージャーを務めるピーター・ズントーの妻・アナリザ・ズントーインタビュー記事。
浄化と再生の風呂をテーマに、個人宅の新発想による浴室デザイン施工例写真、平面図、
世界の風呂文化、韓国の蒸汗、中国の公衆浴場、イスラームの風呂等の紹介、
メキシコの蒸気浴テマスカル体験記。
国内のセルフビルド浴室紹介。
日本の「古寺に見る風呂の源流」では非公開の「東福寺浴室」「西本願寺飛雲閣黄鶴台」の内部写真解説。
イームズ夫妻の家の内部写真解説9ページ、
「剣持勇のラウンジチェア」では7ページにわたり、日本を代表するインダストリアルデザイナー、
剣持勇のラウンジチェアほか作品の写真解説、年表なども記載。
ピーター・ズントーに関する本は数少なく、本特集記事ではテルメヴァルスに特化した内容に加えて、
他の記事も珍しい、雑誌でありながら内容充実、カラー写真も豊富で大変貴重な資料本です。
【目次】より一部紹介
特集 浄化と再生の風呂
The Bath for Purification and Rebirth
温泉を湛える石の空間、スイス 「フェルゼン テルメ」 テルメ・ヴァルス/テルメルバード・ヴァルス
Felsen Therme A Spa Institution in Switzerland Designed by PeterZumthor 設計/ペーター・ズムトー ピーター・ズントー
浴室デザインの新発想
A New Concept for Designing Bathrooms 家の真ん中にポンと置く 設計/北山恒+アークテクチャーワークショップ
路地を抜けて共同風呂へ 設計/北山恒 アークテクチャーワークショップ
亜熱帯の植物と共に 設計/高橋尚人(アノニム建築設計室)
月光と音楽を浴びる 設計/廣部剛司
小さな浴室を豊かにする設計手法
Designing Small but Comfortable Bathrooms
今井均(創建築アトリエ) IMAI, Hitoshi
清潔の風呂、快楽の風呂、魂の風呂 風呂の意味を考える
A Consideration of the Meaning of "Taking Bath" 吉田集而 YOSHIDA, Syuji
メキシコの蒸気浴 テマスカル体験記
The 'TEMASCAL' Experience A Mexican Steam Sauna 文・写真/小野一郎 ONO, Ichiro
等身大の居心地 つくり手たちによるセルフビルドの風呂場 Examples of Self-built Bathrooms in Mashiko
古寺に見る風呂の源流
Origins of Japanese Bath Culture Lie in Old Temples.
東福寺浴室(京都市東山区)
西本願寺飛雲閣黄鶴台(京都市下京区)
木の香りのする浴室をつくる
The Introduction of Wooden Bathroom Goods
浴槽、システムバス、壁・天井材
雰囲気を決める重要ディテール
Bathroom&Lavatory 水栓カタログ
Important Details for Deciding Moods A Faucet Catalogue for Bathroom & Lavatory
広告企画 ユニバーサルデザイン&機能性を追求したシステムバスルーム
Commodities of Practical System-bath-rooms for Universal Design
up to date
DESIGN ARCHITECTURE EXHIBITION
ミケーレ・デ・ルッキ「プロドッツィオーネ・プリヴァータ」 公開された吉田五十八設計「豬股邸」 10日ごとに企画展を行う「ギャラリー介」、オープン
好評連載
生き続けるモダニズム建築
The Modern Architecture Which Has Remained Long Life
東京の都市化の象徴 東京都千代田区 「パレスサイド・ビルディング」 設計/日建設計(林品二)HAYASHI, Shoji 文/渡邊研司 WATANABE, Kenji
時代を映し出す、建築パビリオン [イタリア・ヴェニス・ビエンナーレ会場]
住宅巡礼 Residential Pilgrimage
イームズ夫妻の家 EAMES HOUSE Designed by Charles and Ray Eames 中村好文 NAKAMURA, Yoshifumi
働く建築再発見 日本の木組の小屋
The Function of a Builiding ハサ小屋 安藤邦廣+黒坂貴裕格+沖元太一 ANDO, Kunihiro + KUROSAKA, Takahiro+ OKIMOTO, Taichi
一脚の椅子・その背景 A Chair and Its Settings
剣持勇のラウンジチェア 島崎 信 SHIMAZAKI, Makoto
不思議の国の建築家たち「イスラム編」 Architects in Wonderland Features from Islam
SIDE STORY 無秩序という秩序都市 村松 伸+淺川敏 MURAMATSU, Shin+ASAKAWA, Satoshi
全国家具産地探訪 徳島・高松
Reporting from a Furniture Producing District, "Tokushima and Takamatsu", Japan
村澤一晃 MURASAWA, Kazuteru
自分の山のつくりかた 10 How to Build "Your Own Mountain" 日本人はなぜ山を運ぶのか、中野 純 NAKANO, Jun
姿勢と住まい方(アジア) Posture and Interior 五山十刹図の椅子・中国から日本へ 財満やえ子 ZAIMA, Yaeko
情報と空間の新しいデザイン Information-oriented New Design of Space Utilization
人・モノ・環境のトータルなデザインを問い直す ヒューマン・センター・デザインへ向けて 渡辺保史 WATANABE, Yasush
これから行なわれるイベント、講演会
ほか
家具、建材、設備機器の新製品
バックナンバー紹介
次号予告・広告索引・奥付
【ピーター・ズントー 特集ページ】より一部紹介
スイス・グラウビュンデン州にある小さな村ヴァルス。 そこに、村の人々の夢が詰まった温泉施設がある。 土地の石でできたストイックな建築が生み出す、光と闇と音の空間。 湯を通して体内の自然を呼び覚ます。一
五感を呼び覚まし、自然と向き合う。
温泉を湛える石の空間 「フェルゼン テルメ」
スイス・ヴァルス温泉浴場
Felsen Therme Designed by Peter Zumthor
設計 ペーター・ズムトー ピーター・ズントー
遠い記憶に働きかける。清め、瞑想の神殿。
フェルゼンテルメ(Felsen Therme=岩魂の湯)は、ヴァルスの険しくアルカイックな山肌に、なかば食い込んだような形で建つ。ペーター・ズムトーの設計により、13年の歳月を費やして86年に竣工したこの温泉浴場は、地元の石切り場から切り出された6万枚もの片麻岩や珪岩による構造壁と、コンクリート、ガラスから成る。まるで大きな1つの岩盤をくり貫いたようなつくりて、屋内と屋外の大浴槽を中心として、工夫を凝らした4つの小さな浴室、スチームバス、瞑想室、シャワー室、いくつかの休憩室が配置されており、計150人収容という規模だ。フェルゼンテルメの意義は、ヴァルスの「石と湯」を体感してもらうことにある。視覚、嗅覚、聴覚、触覚、
味覚、その五感に、直接働きかけるための装置として設計された「石と湯だけの空間」は、とてもストイックだ。そのシンプルなつくりが、光や闇、音などの無限の面白みを引き出す。床も壁も、大岩のプレートが連続する浴場。石から湯へ、そこにも境というものがない。室内大浴槽では、白い石英を含んだ片麻岩と灰緑色の珪岩の色を反射した湯が、川の清流のように
青緑色を帯びて美しい。天井のスリットから光の射し込む浴槽に身体を浸すと、身が清められる思いだ。
小さな4つの浴室は、光と闇と音の空間でもある。洞窟のようなトンネルを抜けて入る「泉の洞窟」では、人の(以下略)
【各写真説明文】一部紹介
スリットから射し込む光が美しい。儀式の場のような静謐さが漂う屋内メインの大谷槽。
屋外浴槽へと続く通路。そこからすでに「入浴」が始まる。暗く細い空間を抜けた先、左に明るく開けたプールのような大浴槽が広がる。
上/屋内大浴槽の天井。四角く切り取られた部分にはブルーガラスが嵌めこまれている。
下/地元で採れる片麻岩と珪岩。青みを帯び、神聖な感じさえ与える。
左ページ/大浴槽への階段。浴槽内部のライトで幻想的に照らし出される。
右ページ・右2点/休憩スペース。寝椅子もズムトーのデザイン。
浴場内で外に開かれているのは、これらの空間だけ。閉鎖的な浴室で湯に解きほどかれた心身が、窓の向こうの風景に吸い込まれてゆく。
上/妥協を許さず、練りに練られた石の空間には、ズムトーの精神が現れているようだ。本当に美しい。
右ページ/「泉の洞窟」。やっと一人通れる、頭をぶつけそうな洞窟を抜けた先。
天井だけが高い、暗く小さな空間だ。
上/屋内奥から、屋外浴槽へと続く通路に向かって。陰影の心地よさに満たされる。
下/エントランスから更衣室までの通路には、象徴的に源泉をそのまま流している。壁の錆色が鉄分の多い湯であることを物語る。
ほか