
傷み汚れございませんが中古品にご理解下さい。
美貌、富、権力。全てを手に入れた女性。
ヴェルサイユ宮殿を舞台に繰り広げられる、壮大な歴史ロマン。
累計130万部! 絢爛豪華、何度も舞台化されたベストセラー。
美しいブロンドの髪とあどけない瞳を持つ14歳の少女が、オーストリアからフランス皇太子妃として迎えられた。少女はやがて、ヴェルサイユに咲いた華麗な花と呼ばれ、フランス最後の王妃として断頭台に消える運命にある……。
フランス革命を背景に、悲劇の王妃の数奇な生涯を、貧しい少女マルグリット、サド侯爵、フェルセン、ミラボーなど多彩な人物を配して綴る、壮大な歴史ロマン。
本文より
結婚式のすべての行事は終った。そして国王も貴族たちもふたたびヴェルサイユ宮殿の宮廷生活に戻った。
ヴェルサイユ宮殿――。今日でもここを訪れた者たちは今から約三百年前にこれほど豪奢な建築物が巴里(パリ)の郊外に建てられたことに驚くだろう。それは「朕(ちん)は国家なり」と豪語できたほどの力を持った独裁王ルイ十四世の作品である。あまたの富を使い、あまたの労力を用い、沼を埋め、樹を植え、石を運ばせ、彼はここに権力と栄光の象徴である大宮殿をつくった。宮殿のまわりを精緻きわまりない庭園で囲んだ。(「鹿の園」)
本書「解説」(下巻)より
まだ前途に悲運の翳(かげ)とて一片だにとどめぬ、アントワネットの若き日々から物語(ロマン)ははじまる。が、ここで彼女の灰色がかった金髪の魅力や、屈託のない言動に触れることは敢えて避けよう。物語にはもう一人、彼女と対偶的な女性がいて、魅力と屈託のなさではひけをとらぬから。名はマルグリット。孤児で薄汚れてはいても、生来の目鼻だちは損なわれていない。そのうえ横顔はアントワネットなみだ。マリー・アントワネットのごとき、礼節で粧(よそ)われた歴史の名花を生かすには、歴史の落穂ならなんでも拾って引き受ける、破廉恥で厚顔だが、同時に実(じつ)も含みもある存在が一方に必要である。マルグリットはそうした作家の思い入れの中で生き、かつ生かされてゆくのだ。
王妃マリー・アントワネット 上巻 (新潮文庫 え-1-21) (改版) 遠藤周作/著