図録本 星ビルカレンダーを飾ったアンティークドールたち 1981~2004 写真集
仁田一也 写真
2003年初版
29.5x22.5x1.3cm
フルカラー
95ページ
※絶版
有名な「星ビルカレンダー」で使用されたアンティークドールたちの写真をまとめた写真集。
ドレスから小物まで大変雰囲気のある写真満載の、愛好家必携の大変貴重な資料本。
かつてあった、世界有数のビスクドール収集を誇る星ビルコレクションの中から、
幻の人形といわれる「A.チュイエ/AT」をはじめ、ジュモー、ブリュ、ゴーチェ、スタイナー、シモン&ハルビック、S.F.B.J、など、
黄金期に主にヨーロッパで作られた華麗な人形たちを一同に写真に収めたカレンダー写真集。
【序文より】
星ビルカレンダー
星ビルで、アンティークドールの取り扱いを始めたのは1980年ころのこと。
初めは記録のために写真を撮っていたが、これでカレンダーをつくることになった。
このカレンダーは、幸いご好評をえて、その後も毎年撮りつづけて23年になる。
このたび呉市立美術館でのアンティークドール展開催を機に、星ビルカレンダーの総集編を刊行することになった。
この間、幸運にも多くのすばらしい人形たちとの出会いがあり、その美しさを共感して下さったすべての皆様に、心から感謝申しあげたい。
カレンダーとしては、もっと季節感も盛り込みたかったが、ドールの屋外ロケは思いのほか困難で、例えば、1985年版、雪中での撮影などは3年がかりになった上、 あまりの冷たさに音をあげてしまった。
いろいろと制約の多い作業だったが、アズライフの谷川社長はじめ有能なスタッフのお手伝いもあって、ここまで絖けることができ、今となっては貴重な記録になったと思う。
【主な人形作家と工房】
ジュモー〈フランス〉
衣裳制作から出発したジュモーは、1870年代にビスク作りを始めます。
他社への供給、様々な彫刻家の登用、万国博覧会を通じての広告宣伝活動、百貨店などの新たな販売ルートの発掘など人形ビジネスに対して並々ならぬ経営手腕を発揮し、フランス人形の名を不動のものにしました。
ブリュ〈フランス〉
ブリュは高品質で、かつ新しい人形作りに挑戦した人で、泣き、笑いの二つの顔を持つダブルフェイスの人形、ゴムのボディを付けた人形、その後、木製で動きの伴った人形、1879年にはキッドボディのベベタイプのものやミルクを飲む人形と、個性豊かな人形を制作しました。
F・ゴーチェ〈フランス〉
人形ヘッドメーカーとしては最古参組で、しかも多くのメーカーに上質のビスクヘッドを提供していました。人形制作会社ジェスラン、ジュリアン、プチ&デュモンティエ、ラベリ&デルフィー、A・チュイエ、ビッシイなどに、ヘッドを提供フランスビスクドールの草分け的存在です。やや大人びた表情、大きな眼が特徴です
スタイナー〈フランス〉
機械仕掛を得意としたスタイナーは、キックしたり、泣きやワルツの動きのある各種の人形を制作しましたが、1880年代に始まったブルゴアンとの共同制作などでは、傑作を数多く世に送り出しました。1880~90年にかけては、フランスの人形業界をジュモーエ房とともに盛り立てていきます。シリーズA~G、フィギュアA~Eまで幅広くべべを制作しています。
シュミット〈フランス〉
1870年代には、別のラインとしてジュモーにもヘッド制作の依頼をしていたためジュモー初期の作品によく似た顔立ちが見受けられます。
一般にシュミットの特徴は、しっかりした顔立ちと、各部にわたる丁寧な人形作りにありしかも芸術性の高いものばかりです。作品も極めて少ないため高価なものと言えます。
A・チュイエ〈フランス〉
A・チュイエ、俗称AT(アーテー)はサイズ2号から15号までの人形を作り、その中のいくつかはゴーチェエ房のヘッドを使用していました。またスタイナーエ房のヘッドを使用していたとも言われています。一般にビスクの焼きあカ愬、色付けも美しく仕上げられています。
制作期間が短く、作品が少ない事もあり、稀少価値で話題を呼んでいます。
A・マルク〈フランス〉
フランス・ファッション界M・ラクロアのコーディネイトにより、彫刻家A・マルクが塑像を作製。フランス各地の伝統的衣裳を身にまとったこの人形は、特異で愛らしい顔立ちや、ボディラインとあいまって人気を博しました。現在では、世界で20数体しか現存しない稀少品で、しかも美術的にも高く評価されています。
ケストナー〈ドイツ〉
ドイツで最も古いメーカーで、1860年にチャイナやビスクヘッドを製造しコンポジションボディをつけた人形を売り出します。この頃はマークがありません。
1880年になるとビスクドール、1909年にはキャラクタードールを製造します。
1930年にはカンマー&ラインハルト社と合併します。
シモン&ハルビック〈ドイツ〉
1869年、良質の磁器工場を創業し、パリアンからドールハウスドールまで様々な人形を作りました。特にフランス、ドイツの多くのメーカーに自分のイニシャルと依頼者の名前を刻印した人形のヘッドを提供したことで有名です。
人気メーカーだったため、1930年まで製造を行いました。
Mアロポー〈フランス〉
Hと刻印された頭のマークからフランス語読みでアッシュとも呼ばれます。サイズは必ず「H」の前に刻印されています。作品のヘッドやボディの質が均一で高く、しかもヘッドは初期の「型押し」で繊細に作られ、また、作品が非常に少ないため、コレクター間では、「コレクターの夢」とさえ言われています。
ダネル&ジイ〈フランス〉
エッフェルタワーのシンボルマークで「Paris Bebe」として登録し、ジュモーによく似た人形を制作しました。反面、鼻に特徴のある「ジュイッシュべべ」(ユダヤの鼻と呼ばれる)のような個性豊かな作品も制作しています。1890年過ぎには「Paris Bebe」「Bebe Francais」の登録意匠は、ジュモーに移ります。
S.F.B.J エス・エフ・ビー・ジェイ〈フランス〉
ドイツ人形業界の猛攻により劣勢に立ったフランス人形業界が対抗処置として1899年「フランス人形玩具製造組合」を起こした、その頭文字に由来します。
創造性豊かな表情の人形(キャラクター人形)などが新市場を開拓して1950年頃まで続きます。