
インドネシア染織は、奥が深いものです。今回は、今まで出品したことの無い珍しい染織が複数出てきました。こちらもそのうちの一枚で、良い時代に蒐集したので、出品できるイカットです。
絣のない織りだけの染織を除き、イカットの良し悪しは、絣文様の多様さや緻密さ、確かな括り(イカットの語源)の技術の高さにあると考えています。両方兼ね備えた布は少なく、時代が下るにつれて、括りが甘く文様が雑になってぼやけたり、科学染料が多用されたりします。
この布は、インドネシア カリマンタン(旧ボルネオ)島 西部サラワク地域に住むイバン族の女性用スカートです。元は、筒状だったのが開かれています。1枚目画像の状態で、長さ約長さ94㎝×上幅約44㎝下幅約49㎝です。先週の樹皮布同様、ジャングルの奥地に暮らす民族の古い布が市場に出ることはあまりありません。こちらは、観光客向けの布ではなくオリジナルで、その中でも選別してコレクションに入れていたので、以下の理由でレベルの高い一枚です。「イバン族 イカット」で検索していただくと、素晴らしさがお分かりいただけるかと思います。
まず、この布の絣文様には甘さが見られず、実に複雑です。狭いスペースに複雑な文様が凝縮されイカットの見本のような布です。20c後半のイカットにありがちな、単調でぼやけた文様の繰り返しではなく、くっきりと浮かび上がるような絣で、括りも実に上手です。例えば、10枚目画像左は、図録掲載のスカートなので繊細ですが、通常はこのように中央の絣文様が左右か上下対称で単調です。しかし、出品の布には同じ文様部分がなく、今では意味の失われたプリミティブな文様がびっしりと織り込まれていて見事です。中央部分は繊細に紡がれた手紡ぎ糸(9枚目のアップ参照。実際より明るく写っていますが1本1本太さが違うのが分かります)で、天然染料です。今ではこのような繊細な糸を紡ぎ出す技術はありません。また、左右両端部分にも美しい絣が織り込まれています。
左右両端の色糸部分は、紡績糸です。しかし、イギリスの植民地であったカリマンタン島西部には、19世紀後半には紡績糸が入っており、現地の手紡ぎ糸より高価な貴重品でした。10枚目画像右側は、図録掲載の同地域の布ですが、同じ色糸が使われていて、年代は19c末から20世紀初となっています。このスカートも1900年前後のものであることを保証します。しかも、ほとんど水をくぐっておらず退色が無く理想的な色味で抜群の状態です。当方、インド更紗やよほど珍しい布を除き、単に古いだけの鑑賞に耐えられない布は、蒐集の対象外でした。目に付く傷みや補修はありませんが、汚れや糸のほつれ等が見られますので、古布であることをご理解の上、ご入札をお願いいたします。
整理のため出品しますが、このレベルのイバン族の染織の世界的な評価を考慮すると大変リーズナブルかと思います。プリミティブな品がお好きな方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。
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