特集 袋物たちの小さな命 目の眼 古美術・骨董案内 水谷コレクション公開 煙草入れ 提げ物 提物 緒締 根付
嚢物 江戸時代
1992年8月
里文出版
160ページ
約21x15x1cm
※絶版
江戸時代を中心に、明治時代、大正時代まで、一般の庶民が日常に愛用した小型の嚢物・袋物装身具特集号。
「袋物たちの小さな命」印籠・袋物蒐集家であり古物商の水谷秀次郎氏がテキストとともに、
水谷コレクションから37点をカラー写真で誌上披露・用途や素材、技法、根付や緒締め、金具など各作品の詳細解説。
前金具や根付、緒締めなど銘のあるものは銘を記載。
テキストの参考作品のみモノクロ。
「江戸の粋―煙草入」記事は市袋物界の長老・袋物研究家の市川カ三氏が解説。中村清コレクション/中村コレクションから煙草入れを5点紹介。「印伝雑記」では染韋研究家の寺田澄史氏によるエッセイ、閑清縫についてなど、印伝一つ提煙草入1点を紹介。
袋物、煙草入れ、印伝特集記事27ページ。
とりあげた水谷コレクションは、武具・仏具・香・茶道具を除外して、ごく一般の庶民が日常愛用した比較的小型なものを主軸に、一部武士階級の持物も含めて蒐集したもので、江戸・明治・大正の三世代に渡る。(江戸時代が中心)
提げ物、一つ提げ、煙草入れなどに関する本はほとんど無く、
大変貴重な特集記事が掲載された骨董専門誌。
【編集後記】より一部紹介
現在の袋物は美術工芸品という感覚では捉えにくいものです。しかし江戸・明治・大正時代、物は持ち主の趣味嗜好、ステイタスを主張する道具として、磨きぬかれた美に到達していたことは、残された個性豊かな袋物たちが物語っています。
水谷秀次郎さんは、忘れられ捨てられていく小さな袋物に限りないいとおしみをもって蒐集された方です。ひとつひとつのコレクションには失われていく日本人の心意気が感じられます。
袋物界の長老とも呼ばれる市川力三さんは、輝かしい日本の袋物文化の最後の生き証人でもあり、その言葉は貴重です。
熱ルミネッセンス法は、古陶磁研究において、さらに多くのデータを必要としていますが、これからの真贋鑑定の手法の新しい分野となるでしょう。今回は二人の研究者に書いていただきました。
寺田澄史さんが、集められた文献資料は膨大なものになります。名著「日本嚢物史」における閑清縫の記事の原典、そしてさらに古い閑清縫の初出文献まで指摘していただきました。
●特集 袋物たちの小さな命
袋物たちの小さな命 水谷秀次郎
はじめに/日本人と袋物/袋物の始まり/絵画に見る袋物/銭袋、砂金袋/銭袋/胴乱/火打袋/煙草文化と袋物/身分証明品としての煙草入/女性用袋物/煙草入れの製造工程(袋物師、金工師、鋲師、鎖師、煙管、煙管筒・緒締、仕立師)/袋物の素材/文明開化以降の流れ/外来文化の影響/あとがき
江戸の粋―煙草入 市川カ三
印伝雑記 寺田澄史
茶碗作りも百から百から 佐用仁
中河与一心にふれる美 中河与一/市田幸治
古陶磁の科学的な真贋鑑定①
古陶磁の熱ルミネッセンス法による真贋判定 長友恒人
古陶磁の科学的な真贋鑑定②
タイ・メソット出土品 河島達郎
●ずいひつ
蝶と陶芸
読めなくて
聖天使
●連載
江戸時代からのメッセージ
魔鏡のつぶやき
三味線
禅林の墨跡
ほか
【袋物たちの小さな命】より一部紹介
一、はじめに
日本の袋物は長い歴史と時代の変遷によりその時々の流行や男女の性別により使用目的自体も多少異なるが、その種類は難しく多い。
このコレクションはそれらの中から武具、仏具、香・茶道具に使用された袋物を除外して、ごく一般の庶民が日常愛用した比較的小型なものを主目標に、一部、武士階級のものも含めて蒐集したもので、製作年代も、江戸・明治・大正の三世代にわたるものである。
もともと人間生活に密接な関係がある袋物であるが、過去長い間、一部美術的価値の高いものは別として案外粗末に取り扱われ、陽の目にもあわず忘れられてきた。過去、誰もが取り上げず、疎外されたこれらの袋物の美を改めて注目してみたい。
日本の厳しい気候風土にも耐えて、梅雨期の多湿、冬期の乾燥、鼠、虫害にも耐え、心ない人の乱暴な取り扱いや破棄の運命となった仲間達から逃れ、幾多の天災等の弊害をもくぐりぬけ、現在でも比較的良好なコンディションで残っているのは嬉しい。
やはり、このもの達を製作した人々の隠れた魂が宿っているのではなかろうか。それとも過去の日本人独特の伝統の美風、ものを大切にする習慣が彼らを守ったのであろうか。―失われてゆく古い袋物のために―
ほか
【作品写真】解説より一部紹介
寄せ集め小形一つ提 江戸時代
間道、古木綿、金唐革の三種をたくみに組み合わせた小品である。差し根付は是真の作銘があり、金具は金地、鉄波透しで、粋人の持ち物であろう。
以下解説略
刺縫そば屋三ツ組袋物 江戸時代
守り袋
表紙作品の閑清縫部分
鶴金具姫路革藩札入
姫路革金押紋紙入
印伝革小物入
竹材紙巻煙草入
変形小形一つ提 六種の皮を呼び継ぎし、周囲に金唐革を使う、舶載革と見られる珍革。
提煙草入れ
印度革縦長一つ提げ 根付 鉄製発火具 前金具 素銅たけのこ 緒締 象牙彫。
正月尽くし一つ提げ 根付 三河萬歳(銘 民谷) 前金具 鏡餅(銘 光長)裏金具 銘白山子 緒締 鉄製福寿草 銘 夏雄
古渡り印度更紗寄裂巾着 江戸時代
ゴブラン織紙入 江戸時代
金唐革一つ提げ 江戸時代 根付 七宝 緒締 象牙
菖蒲革煙草入 煙草筒 竹と鯨の髭の編物 前金具 金無垢 裏金具 純金無地 緒締 翡翠
大絞り革煙草入れ 江戸時代 煙草筒 象牙蒔絵 銘 羊遊斉 前金具 像 裏金金具共 銘 浄益 緒締 古渡トンボ玉
ほか