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F3924【千載一遇】大江戸の粋!文政小判 真正一両(K14無垢相当)稀少本物!ブラクラ妄想時代小説 黄金の絆、涙河の渡し付属
F3924【千載一遇】大江戸の粋!文政小判 真正一両(K14無垢相当)稀少本物!ブラクラ妄想時代小説 黄金の絆、涙河の渡し付属 [浏览原始页面]
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【商品スペック】
  • 品名:文政小判 一両
  • 管理番号:F3924
  • 時代:江戸時代 文政年間
  • 額面:一両
  • 素材:金・銀合金(K14無垢相当の金品位)
  • 状態:写真にてご確認ください。経年によるスレや変色、摩耗等がございますが、それもまた本物の証であり、歴史の味わいとしてお楽しみいただけます。
  • 付属品:なし(小判本体のみのお届けとなります)

以下、所謂ブラクラ妄想ショートショートです〜〜前回は不眠うつ病み上がりだったので拙い話でスンマソン、脳みそが平常時に戻ったヘイゾ〜ブラッシュアップ、江戸グルメです!

『黄金(こがね)の絆、涙河(なみだがわ)の渡し』
第一章 影を追う小判
【一】
神田明神下の桜並木が、春霞にけむる卯月(うづき)の半ば。長谷川平蔵宣以(のぶため)、人呼んで「鬼の平蔵」と恐れられる火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官は、役宅の縁側で煙管(きせる)を燻(くゆ)らせていた。昼餉(ひるげ)には、馴染みの蕎麦屋『さなだ』から届けさせた、せいろを二枚平らげたばかりだ。つんと鼻に抜ける辛味大根の薬味と、きりりと冷えた蕎麦つゆの風味が、まだ口中に心地よく残っている。
「…頭(かしら)」
背後から、密偵のおまさの声がした。
「どうした、まさ」
「日本橋の呉服問屋『近江屋』の寮(わけや)で、手代が一人殺されました」
「殺しだと?」平蔵の目が鋭くなった。「手口は?」
「胸を一突き。懐を探られた跡があったよし」
「ふむ…」平蔵は煙管をポンと叩き、灰を落とした。「近江屋といえば、このところ羽振りが良いと聞くが。先日も、本所の軍鶏鍋屋『五鉄』で豪勢にやっていたという噂だ」
「へえ。主の利兵衛(りへえ)は堅実な男ですが、どうやら裏で怪しげな銭(ぜに)の動きにも関わっているという噂も…」
「銭の動き、か」
平蔵の脳裏に、先日、筆頭与力の佐嶋忠介(さじまちゅうすけ)が持ってきた話が蘇った。「最近、質の良い文政小判が出回っている。それも、鋳造されたばかりのような、ほとんど使われた形跡のないものばかりだという話でございます」
その小判は、まさしく本物。だが、その出所がどうにも掴めぬという。手のひらに乗せるとずしりと重く、鈍く黄金色に輝く地肌には、茣蓙目(ござめ)がくっきりと刻まれ、上下には五三(ごさん)の桐紋(きりもん)、中央には「壹(いちりょう)」の文字と後藤家の花押。それは紛れもなく、幕府の金座(きんざ)が鋳造した証であった。お写真で拝見したF3924の小判そのものの、人を惑わすような鈍い輝きである。
殺された手代は清吉(せいきち)といい、まだ二十歳そこそこの若者だった。昨夜は、仕事帰りに一杯ひっかけようと、馴染みの居酒屋で熱燗二合と鰯の塩焼きを頼んでいた矢先だったらしい。
「何か、特別なものを狙われたのかもしれませぬな」
「うむ。佐嶋、木村、沢田を呼べ。近江屋と清吉の身辺を洗わせる。彦十(ひこじゅう)と粂八(くめはち)にも声をかけろ。彦十には、例の鰻屋『いづもや』あたりで耳をそばだてさせろ。あそこの蒲焼の匂いには、どんな口の堅い奴もつい緩む」
平蔵は立ち上がり、差料の井上真改(いのうえしんかい)を腰に差した。
近江屋の主、利兵衛は四十半ばの男で、年の割に白髪が目立つ苦労性の顔をしていた。卓には、冷めきった麦飯と、申し訳程度の香の物が置かれている。食欲もないのだろう。
「清吉は…真面目な男でございました。なぜ、あのようなことに…」
「清吉が、最近変わった様子はなかったか。誰かと揉めていたとか、大金を手にしたとか。あるいは、旨いものでも食いに出かけるようなそぶりは?」
「いえ…特には…ただ、数日前、珍しく『深川めしが食いてえ』などと申しておりましたが…」利兵衛は目を泳がせる。
「利兵衛殿。何か隠しているな。正直に申し述べよ」鬼の眼光に射すくめられ、利兵衛は観念したように重い口を開いた。
「…実は、清吉に、ある男への使いを頼んでおりました。品物は…これと同じものでございます」そう言って利兵衛が奥から持ち出してきたのは、桐の小箱。中には、一枚の文政小判が鎮座していた。「これを二十両、清吉に持たせておりました」
「二十両もの大金を、手代一人に?」
「…相手は、深川の材木問屋『相模屋』の主人、卯之助(うのすけ)と申す男でございます。清吉め、無事に届けたら、帰りに『みやこ川』の鰻でも食わせてやろうと思っていたのですが…」
「その卯之助とは、どのような間柄だ」
「…古い付き合いでございます。ただ…卯之助は最近、少々素性の悪い者たちとも付き合いがあるやに聞き及んでおりまして…先日は、柳橋の料亭で、いかにもな連中と酒を酌み交わし、鯛の姿造りや鮑の酒蒸しなどを囲んでいたと…」
どうやら、利兵衛は卯之助を通じて、何か後ろ暗い金の融通を行っていたらしい。
平蔵は、木村忠吾(きむらちゅうご)と沢田小平次(さわだこへいじ)に相模屋卯之助の身辺を探らせる一方、おまさには別の指示を与えた。
「卯之助の周辺に、腕の立つ職人がいるという噂はないか。特に、金細工や彫り物に関わる者だ。それと、卯之助がよく行くという料理屋があれば、そこも洗ってみろ」
【二】
深川、蛤町(はまぐりちょう)。相模屋卯之助の店は、表通りから少し入った、陰気な場所に構えられていた。店の奥からは、昼餉のものか、魚を焼く匂いが漂ってくるが、あまり上等なものではなさそうだ。卯之助自身は五十がらみの強欲そうな男で、忠吾と小平次が訪ねると、あからさまに不機嫌な顔を見せた。手には、食べかけの焼きおにぎりを持っている。
「近江屋の手代が殺された? そいつは気の毒なこった。だが、わしには関わりのねえことだ。それより、わしはこれから『どぜう伊せ喜』で一杯やるんで、忙しいんだ」
「清吉殿は、昨夜、あなた様のもとへ使いに来る途中だったと聞いていますが」小平次が鋭く問い詰める。
「ああ? 使いだぁ? …そういや、来る約束だったかもしれねえが、わしは昨夜、ちと野暮用で店を空けていたんでな。会っちゃいねえよ。…くそ、せっかくのどぜう鍋が冷めちまう」
卯之助の言葉には嘘の匂いがした。
その夜、おまさが平蔵の元へ戻ってきた。岡場所の女たちは、卯之助が意外にも甘いもの好きで、時折、大福餅や金鍔(きんつば)を差し入れてくることなどを話してくれた。
「頭、面白い話を聞きました。卯之助のところに、時折、腕の良い金銀細工師が出入りしているそうです」
「ほう、何という名だ」
「名は、政五郎(まさごろう)。年は三十半ば。以前は腕の良い簪(かんざし)職人として知られていましたが、数年前に深川から姿を消し、最近になってまた戻ってきたとか。聞けば、政五郎は無類の酒好きで、特に辛口の灘の生一本(きいっぽん)には目がないとか」
「政五郎…か」平蔵は顎を撫でた。「その男、女の噂は?」
「それが…一人、いるようでございます。お袖(そで)という名の女で、元は吉原の遊女だったとか。年は二十七、八。息を呑むほどの美貌(びぼう)の持ち主で、政五郎はその女に夢中だと。お袖は料理上手で、特に豆腐を使った料理が得意だとか。政五郎は、お袖が作る湯豆腐と、それに合わせる熱燗があれば、他には何もいらぬと豪語しているそうです」
お袖。その名に、平蔵は微かな胸騒ぎを覚えた。そして、お袖が作るという湯豆腐に、ふと心が動いた。
翌日、平蔵は自ら深川に足を運んだ。供には、木村忠吾を連れている。政五郎とお袖が暮らしているという裏長屋は、大川の淀んだ水路に近い、湿っぽい場所にあった。忠吾が「頭、この辺りに旨い穴子丼の店があるそうで」と呑気なことを言うのを、平蔵は苦笑いで聞き流した。
戸口に立つと、中から女のすすり泣くような声が聞こえてくる。ややあって、一人の女が戸を細めに開けた。
「…どなた様で?」
柳眉(りゅうび)秀で、切れ長の目に憂いを湛(たた)えた女だった。洗いざらしの木綿の着物を素肌に纏(まと)い、わずかに開いた襟元からは、雪のような白い肌が覗いていた。その肌には、何か赤い痣のようなものが点々と…いや、それは接吻(せっぷん)の痕か、あるいは男の指の跡か。部屋の奥からは、微かに味噌の香りが漂ってくる。
「火付盗賊改方である。亭主の政五郎殿に、少々伺いたい儀がある」
平蔵の言葉に、お袖の顔から血の気が引いた。
「…主人は、昨夜から戻っておりません」声が震えている。
「昨夜から? 何か心当たりは?」
「…いいえ、何も。ただ…昨日は珍しく、大きな仕事が入ったと、少しばかり上機嫌で…『これが済んだら、久しぶりに浅草で天麩羅でも食おうか』などと申しておりましたのに…」お袖は伏し目がちに続けた。「でも、何か…怯えているようにも見えました。まるで、何かに追われているような…」
彼女の白い指が、きつく着物の前を合わせる。その仕草が、妙に艶(なま)めかしい。部屋の隅には、小さな作業台と工具、そして僅かな黄金色の粉末が見えた。
「お袖殿。昨夜、政五郎殿は、誰かと会う約束をしていたのではないか?」
「…さあ…私には何も。ただ、昨夜の夕餉は、主人の好物の肉豆腐を用意していたのですが、それにも手を付けずに…」
お袖は頑なに口を閉ざす。だが、その瞳の奥には、隠しきれない恐怖と、そして政五郎への深い情愛が揺らめいていた。
【三】
その日の夕刻、密偵の彦十が慌てた様子で役宅に駆け込んできた。額には汗が滲んでいる。どうやら、途中、屋台の早蕎麦でも掻き込んできたらしい。
「頭! 大変ですぜ! 相模屋の卯之助が、今朝方、首を吊って死んでるのが見つかったそうで!」
「何だと!?」平蔵は思わず立ち上がった。「他殺の疑いは?」
「見つかったのは店の裏の物置小屋で、一応、自殺で間違いないだろうとのことですが…どうもきな臭え。卯之助の懐には、食べかけの豆大福が一つ入っていたそうです」
近江屋の手代、清吉の殺しに続き、今度は相模屋卯之助の自殺。明らかに口封じだ。
「彦十、卯之助の周辺で、最近特に金の出入りが激しかった相手は誰だ。それと、例の政五郎という職人の動きも引き続き洗え。卯之助が行きつけだったという『どぜう伊せ喜』の女中にも、それとなく探りを入れてみろ」
「へい!」
平蔵は、佐嶋忠介を呼び、これまでの経緯を話した。佐嶋は、平蔵の好物である『弁多津』の煎餅を差し入れながら、神妙な顔で聞いていた。
「どうやら、我々が追っているのは、単なる小判の密造や横流しではないやもしれぬ。その背後には、もっと大きな組織が絡んでいる可能性がある」
「例の文政小判ですが、その後も数ヶ所で出回っているのが確認されております。いずれも極めて精巧で、金座の極印(ごくいん)までが正確に打たれている。もしこれが偽造だとすれば、よほど腕の立つ職人の仕業。あるいは、金座から鋳型そのものが盗み出されたか…」
「鋳型か…」
「政五郎は、以前は腕の良い銀簪師として知られておりましたが、ある事件をきっかけに姿をくらましたと聞いております。彼の妹が、ある旗本屋敷に奉公に上がったのですが、手込めにされた挙句、自害したという…その旗本の名は、確か…」
その時、木村忠吾が血相を変えて飛び込んできた。手には、食べかけの串団子を持っている。
「た、大変です! 政五郎とお袖が住んでいた長屋が、火事に!」
「何だと!」平蔵は差料を掴むと、役宅を飛び出した。
現場に着くと、長屋の一角はすでに炎に包まれ、火消したちが懸命に消火活動にあたっていた。周囲には、焦げ臭い匂いと共に、何か甘ったるいような、それでいて香ばしい匂いが混じっていた。おそらく、お袖が夕餉に用意していたのであろう、何かの煮物の匂いかもしれなかった。
「政五郎とお袖の姿は!?」平蔵が叫ぶ。
「まだ確認できておりやせん! 逃げ遅れた可能性も…」
やがて、火勢が少し衰えた頃、焼け跡から二つの黒焦げの遺体が見つかった。男と女の遺体だった。遺体の傍らには、焼け焦げた土鍋の欠片が散らばっており、中からは豆腐らしきものの残骸が見えた。お袖が得意としていた湯豆腐だったのだろうか。
だが、平蔵はどうにも納得がいかなかった。
数日後、焼け跡の検分が行われた。政五郎の作業場があったと思われる場所からは、溶けた金属の塊や、焼け焦げた道具類が見つかった。その中に、一つ、奇妙なものがあった。手のひらに収まるほどの、桐の板。表面には何か模様が彫られていたようだが、ほとんどが炭化し、一部だけ、五三の桐の紋によく似た形を留めていた。
「これは…」平蔵はそれを手に取り、眉をひそめた。「まさか、これで極印を…?」
その夜、平蔵は一人、役宅で件の文政小判を眺めていた。夕餉には、おまさの心遣いで、江戸前の握り寿司が届けられた。中トロの脂の甘み、コハダの酢の締め具合、煮蛤の柔らかさ。どれも平蔵の好物ばかりだったが、事件のことが頭から離れず、いつものように舌鼓を打つ気にはなれなかった。
ふと、小判の縁に、微細な傷があるのに気がついた。
「…まさか」平蔵は、小判を指で弾いてみた。チーン、という澄んだ音がする。だが、余韻がどこか不自然に短い。手燭(てしょく)の炎にかざし、小刀の先で縁の傷の部分を慎重にこじってみる。パキリ、という微かな音と共に、小判の表面が薄く剥がれたのだ。剥がれた金の下から現れたのは、鉛(なまり)か錫(すず)のような、鈍色の金属だった。
「…やはり!」巧妙な「包み金(つつみがね)」の偽小判だったのだ。焼け跡から見つかった桐の板は、この薄い金の板に茣蓙目や桐紋を型押しするための版木だったのかもしれない。
政五郎は、この偽小判を作っていたのか。そして、その秘密を知りすぎたために、黒幕に消された…? だが、あの黒焦げの遺体は本当に政五郎とお袖だったのだろうか。平蔵の脳裏に、お袖の憂いを帯びた美しい顔と、その白い肌に残された赤い痕が蘇った。そして、焼け跡に残された土鍋の欠片。あの夜、二人はどんな想いで湯豆腐を囲もうとしていたのだろうか。平蔵は、残りの寿司に手を伸ばす気にもなれず、深くため息をついた。
第二章 涙の紅(べに)、絆の糸
【一】
政五郎とお袖の死は、事件の幕引きとなるのだろうか。いや、平蔵はそうは思わなかった。
「佐嶋、木村。改めて、政五郎の過去を洗い直せ。それから、お袖という女のこともだ。木村、お前は腹が減ると頭が働かぬから、先に『笹や』の団子でも食ってこい」
密偵のおまさも、独自の探索を続けていた。吉原の引手茶屋で、甘い葛湯(くずゆ)を啜りながら、さりげなく情報を引き出す。
数日後、おまさが平蔵のもとへ新たな情報をもたらした。その手には、馴染みの菓子屋『梅花亭』のきんつばが握られている。
「頭、お袖のことですが、少し分かってきました。彼女は、元は武家の娘だったようです」
「武家の娘?」平蔵はきんつばを一口齧りながら、意外な表情を見せた。
「はい。京橋(きょうばし)あたりの小普請組(こぶしんぐみ)の家だったとか。しかし、父親が病で亡くなり、家は困窮。お袖は、まだ十代半ばで、病身の母と幼い弟を養うために、自ら身を売って吉原へ入ったのだそうです。聞けば、その頃はまともな食事もできず、弟に握り飯を一つ分け与えるのがやっとだったとか…」
「…そうか」
「吉原では『雛菊(ひなぎく)』という源氏名で、その美貌と気丈さで人気があったよし。しかし、決して心を開かず、どこか影のある女だったと。そして三年ほど前、ある男に身請けされたのですが…その男が、どうも政五郎ではないようなのです」
「何? 政五郎ではないと?」
「はい。身請けしたのは、もっと年嵩(としかさ)の、羽振りの良い商人だったという話です。しかし、その商人は一年ほどでお袖に飽き、手放したとか。その商人は、お袖に毎晩のように高価な料理屋へ連れて行き、贅沢三昧をさせていたそうですが、心は満たされなかったのでしょう」
一方、佐嶋忠介も政五郎の過去について調べていた。政五郎は、もともと腕の良い銀簪師として知られ、特に透かし彫りの技術は江戸でも指折りだったという。しかし、数年前、妹のおきぬが仕えていた旗本・神尾主膳(かみおしゅぜん)に手込めにされ、それを苦に自害するという悲劇が起こる。政五郎は神尾を深く恨み、仇を討とうとしたが、逆に神尾の手の者によって捕らえられ、半殺しの目に遭わされた。その後、江戸から姿を消していたのだ。
「神尾主膳…その神尾は、今どうしている?」
「それが…数ヶ月前、病で急死したとのことでございます。表向きは病死ですが、美食家で知られた神尾が、ある日、馴染みの料亭で食べた河豚(ふぐ)にあたったのが原因ではないか、という黒い噂も…」
そんな折、密偵の粂八が、一つの興味深い情報を持ってきた。粂八は、両国の居酒屋で冷奴と熱燗をやりながら、隣の客の会話を小耳に挟んだのだという。
「頭、例の偽小判ですがね、どうやら『紅屋(べにや)』という両替商が、それと知らずに掴まされているらしいって噂ですぜ」
「紅屋? 日本橋の、あの大きな店か?」
「へい。何でも、大口の取引で、まとまった数の文政小判が持ち込まれたんですが、その中に例の『包み金』が紛れ込んでいたらしいんです。紅屋の主人は、そのショックで寝込んでしまい、好物の粟ぜんざいも喉を通らないとか」
「その小判を持ち込んだのは、どこの誰だ?」
「それが…どうも深川の材木問屋、相模屋卯之助の名前が出てるらしいですぜ」
卯之助、そして偽小判。やはり繋がっている。平蔵は、紅屋の番頭に直接話を聞くことにした。
【二】
紅屋の番頭・治平(じへい)は、平蔵の来訪に恐縮しきっていた。顔色が悪く、目の下には隈ができている。
「単刀直入に聞く。お宅で、偽の文政小判が見つかったというのは真か」
治平の顔がさらに青ざめた。
「…はい。お恥ずかしながら…先日、お得意様から納められた五十両の文政小判の中に、十両ほど、例の…その、鉛に金を被せたものが紛れ込んでおりました」
「その得意様とは?」
「…深川の、相模屋卯之助様…の使いと名乗る男でございました。卯之助様とは長年のお付き合いでございましたが…以前は、よく一緒に『駒形どぜう』へ行ったものでしたが…」
治平の話によれば、卯之助の使いと名乗る男が小判を持ち込んだのは、卯之助が自殺する数日前のことだったという。
「この金の薄板…これほどのものを作るには、相当な腕が必要だ。政五郎という職人の名に心当たりは?」
「政五郎…? いえ、存じ上げません。しかし、これほどの手仕事ができる者は、そうはおりますまい」
「この小判のせいで、店の信用は失墜寸前。今夜は、馴染みの小料理屋で、熱燗と〆鯖(しめさば)で一杯やって憂さ晴らしでもせねば、やってられませぬ」
平蔵は、治平の言葉を聞きながら、別のことを考えていた。
役宅に戻った平蔵は、おまさを呼んだ。昼餉には、忠吾が気を利かせて買ってきた『両国』の鳥飯弁当が出た。鶏そぼろと錦糸卵の彩りが美しく、甘辛いタレが染み込んだご飯が食欲をそそる。
「まさ、お袖が吉原を出た後、政五郎と知り合うまでの足取りを、もう一度詳しく調べてくれ」
「…畏まりました」
おまさは、再び吉原界隈に足を向けた。馴染みの茶屋の女将は、おまさに自家製の梅干しを振る舞いながら、昔の吉原の華やかな話をしてくれた。
そして三日後、おまさは一つの重要な手がかりを掴んで戻ってきた。
「頭…お袖は、吉原を出た後、一時期、薬種問屋の『丹波屋(たんばや)』に奉公していたようです」
「丹波屋? 本町(ほんちょう)の、あの大きな店か」
「はい。奥向きの雑用をしていたと。そこで…丹波屋の若旦那と、深い仲になったという噂が…」
「若旦那と?」
「丹波屋の若旦那・宗太郎(そうたろう)は、当時、放蕩三昧で身を持ち崩しており、お袖の美しさに迷い込んだようです。お袖を連れては、毎晩のように芳町の料亭や芝居茶屋を飲み歩き、金に糸目をつけなかったとか。しかし、宗太郎には親が決めた許嫁がおり、お袖との仲は長くは続かなかった。宗太郎は、お袖に手切れ金を与えて追い出した…と、そういう話でございます」
「手切れ金…いくらだったか分かるか」
「…五十両、と聞いております。その金で、せめてもの思い出にと、一度だけ、母親と弟を連れて『八百善』の料理を食べさせてやったとか…」
五十両。紅屋が掴まされた偽小判と同じ額だ。
「その丹波屋の若旦那、宗太郎は今どうしている?」
「それが…数年前、家を勘当同然に出て、今はどこで何をしているか分からないとか。ただ、とんでもない悪党仲間とつるんで、悪事を重ねているという噂も…最近では、賭場に入り浸り、有り金全てをすって、屋台の安酒と煮込みで腹を満たしているとか…」
おまさの話を聞きながら、平蔵の頭の中で、バラバラだった点が線で結ばれ始めていた。
【三】
平蔵は、丹波屋の主人・丹波屋徳兵衛(とくべえ)に会うことにした。徳兵衛は六十歳を過ぎた頑固そうな老人で、息子の宗太郎の話になると、苦虫を噛み潰したような顔をした。応接間の卓には、上等そうな羊羹(ようかん)が一切れ置かれていたが、徳兵衛はそれに手を付けようともしない。
「宗太郎のことは、もはや私には関わりのないこと」
「宗太郎殿が、お袖という女と懇意にしていたことはご存知か?」
徳兵衛は顔をしかめた。「…あの女狐め。息子を誑(たぶら)かし、我が家から金を巻き上げようとした破廉恥な女だ。あの女に入れあげていた頃、宗太郎は毎晩のように泥酔して帰り、翌朝は二日酔いで寝込んでばかり。好物の奈良漬けさえ喉を通らぬ始末でございました」
「その五十両の小判について、何かお気づきの点は?」
「小判? さあ…ただの小判だったと記憶しているが」徳兵衛は、偽小判のことは知らないようだった。
平蔵は、丹波屋を辞去した後、木村忠吾に命じた。
「忠吾、宗太郎の行方を徹底的に洗え。奴が今、どこで誰と何を企んでいるのか、突き止めるのだ。特に、奴がよく出入りするという賭場や、安酒場を重点的に洗え。腹が減っては戦はできぬと言うからな、途中で『むさしや』の焼き鳥でも食って精をつけろ」
数日後、忠吾が息を切らして報告に来た。その手には、案の定、焼き鳥の串が数本握られている。
「頭! 宗太郎の居場所が割れました! どうやら、両国橋近くの矢場(やば)を根城にしている、『蛇の目の銀次(じゃのめのぎんじ)』という悪党一味に加わっているようです! 昨夜も、その矢場の奥で、一味の連中と鍋を囲んでおりました。どうやら、猪鍋(ししなべ)だったようで、味噌の良い香りが…」
「蛇の目の銀次…」聞いたことのある名だ。凶悪な一味だ。
「銀次一味は、最近、大きな仕事をやったという噂があります。それが、どうも偽小判の件と繋がっているような…」
「…よし。今夜、蛇の目の銀次の根城を急襲する。佐嶋、木村、沢田、同心たちを集めろ。それから、おまさ、彦十、粂八にも協力を頼む。今夜は冷える。皆に、温かい蕎麦でも振る舞ってやれ」
その夜。月も隠れた闇の中、平蔵率いる火盗改方の一隊は、蛇の目の銀次の根城である矢場を取り囲んだ。中からは、酒盛りの喧騒と、下卑た笑い声、そして猪鍋の匂いが漏れ聞こえてくる。
平蔵の合図で、同心たちが一斉に踏み込んだ。「火付盗賊改方である! 神妙にしろ!」
不意を突かれた悪党たちは、抵抗を試みるが、鬼平配下の精鋭たちの敵ではない。
その時、奥の部屋から、一人の男が裏口へ逃げようとするのが見えた。
「待て!」平蔵が鋭く声を上げると、男は振り返った。丹波屋の若旦那、宗太郎だった。手には、食べかけの握り飯が握られている。
宗太郎は、平蔵の姿を見ると、観念したようにその場にへたり込んだ。
「…長谷川様…」
「宗太郎、貴様が蛇の目の銀次と組んで、偽小判を売り捌いていたのか」
「…はい。銀次の奴に唆(そそのか)されて…成功したら、たらふく酒を飲ませてやると言われまして…」
「その職人とは、政五郎のことか」宗太郎はこくりと頷いた。
「政五郎は、どうやってお前たちの仲間になった?」
「…それは…お袖という女が…お袖が、政五郎を銀次に引き合わせたんです。お袖は、昔、俺がやった五十両が偽物だったことに腹を立てていて…その仕返しのために…」
「何? お袖が政五郎を引き合わせただと?」
「それだけではない。お袖は、政五郎が作った偽小判の出来栄えを確かめ、時にはその金の薄板に、あの美しい指で紅を差すようにして、金の色の具合を調整していた…まるで、化粧でもするかのように…あの女、時々、政五郎に夜食だと言って、握り飯や簡単な煮物を作って差し入れていました」
宗太郎の言葉は、平蔵に衝撃を与えた。
「政五郎とお袖は、どうなった。お前たちが殺したのか」
「ち、違います! 俺たちは殺してなんかいません! あの二人は…銀次の奴が、もう用済みだから始末すると言っていたのを、お袖がどこからか聞きつけて…二人で逃げようとしたんです。でも、銀次の手下に見つかって…長屋に火を放たれたのは、その時です…あの時、お袖は政五郎に『逃げましょう、どこか遠いところで、二人で小さな畑でも耕して、とれたての野菜で鍋でもつつきましょう』と言っていました…」
「…そうか」長屋の火事は、やはり口封じだったのだ。しかし、あの黒焦げの遺体は…。
「頭!」その時、おまさが駆け込んできた。「例の、焼け跡から見つかった桐の版木ですが…あれは、どうやら政五郎が、あるものを隠すために作ったものかもしれません」
「あるものを隠すため?」
「はい。あの版木、よく見ると、中に空洞があるようなんです」おまさは、懐から一枚の文政小判を取り出した。近江屋利兵衛が清吉に持たせたという、本物の小判だった。F3924の小判のように、ずしりとした重みと、歴史を感じさせる風格がある。
「清吉が殺された時、奪われたのはこの本物の小判だったのかもしれません。そして、政五郎は、この本物の小判を偽物とすり替え、これをどこかに隠そうとしていた…そのために、あの版木を…」
平蔵の脳裏に、電光石火のひらめきが走った。政五郎は、偽小判を作っていたのではない。彼は、本物の小判を悪党たちの手から守ろうとしていたのではないか? そして、お袖もまた、彼に協力していた…?
平蔵は、お袖の憂いを帯びた美しい顔を思い浮かべた。彼女の涙は、何のために流されたのか。その涙で濡れた紅は、何を語ろうとしていたのか。そして、彼女が政五郎のために作ったという握り飯や煮物の味は、どんなだったのだろうか。
第三章 暁(あかつき)の誓い、黄金(こがね)の絆
【一】
「…小舟で大川を下った、職人風の男と息を呑むほどの美女…」平蔵は、おまさと彦十の報告を反芻(はんすう)し、深く頷いた。やはり、政五郎とお袖は生きている。
平蔵は、役宅の台所で簡単な夜食の準備をしていたおまさに声をかけた。
「おまさ、今夜は冷える。何か温かいものでも頼む」
「かしこまりました。では、五鉄の軍鶏鍋でも取り寄せましょうか?」
「いや、そこまで大袈裟でなくていい。近所の蕎麦屋から、鍋焼きうどんでも取ってくれ。卵を落としてな」
「承知いたしました」
平蔵は、すぐさま佐嶋忠介と木村忠吾を呼んだ。
「佐嶋、例の焼け跡の遺体だが、改めて検分し直せ」
「はっ!」
「忠吾、お前はもう一度、蛇の目の銀次を締め上げろ。奴はまだ何かを隠している。…終わったら、温かい汁粉でも食わせてやれ」
役宅の一室で、平蔵は再び蛇の目の銀次と対峙した。部屋には、平蔵が注文した鍋焼きうどんの湯気が立ち込め、鰹節の良い香りが漂っている。
「銀次。政五郎とお袖は生きているな」
銀次はニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。「へっ、何のこってござんしょう。それより、長谷川様、その鍋焼きうどんは旨そうですな。海老の天ぷらも入っているようで」
「惚(とぼ)けるな。火事の夜、二人が小舟で逃げるのを見た者がいる。お前は、二人がどこかに隠したものを狙っているのだろう? それは何だ?」
銀次の顔が一瞬こわばったが、すぐにまた不敵な笑みに戻る。
「さあねえ。ですが、もしあの二人が生きているとすれば、さぞかし路銀にも困って、どこかで野垂れ死にでもしてるんじゃねえですかい? あの女、意外と食い意地が張っていてな、俺が買ってきた大福餅を、それは旨そうに頬張っていたぜ」
「お袖が、政五郎の作る偽小判の金の薄板に、紅を差していたという話だったな」
「へえ、そうで。あの女、妙に器用でしてね。まるで化粧でもするように、その細い指で紅をちょいちょいと…。あの女、時々、政五郎と二人で、こっそり甘酒屋なんぞへ行っていたようだ。何を話していたんだか」
「その紅は、どこで手に入れたものか、知っているか」
「紅ぃ? さあね、女が使うもんにいちいち興味はねえが、確か、上等な笹紅(ささべに)だとか言ってたような…お袖は、その紅を塗った唇で、政五郎に何かを囁いていたのかもな。例えば、俺を裏切る相談とかよぉ!」
その頃、おまさは、焼け跡周辺で聞き込みを続けていた。彦十は、大川沿いの船宿や渡し場をしらみつぶしに当たっている。昼餉には、屋台で買ったいなり寿司を頬張りながら、聞き込みを続ける。
日も暮れかかった頃、おまさが一人の老婆から興味深い話を聞き出した。老婆は、火事の数日前、お袖が一人でこっそりと何かを川に流しているのを見たというのだ。
「…小さな、桐の箱のようなものをねえ、大事そうに抱えて、月の明るい晩に、そっと水に浮かべていたんですよ。まるで、何かを弔うかのようにねえ…その時、お袖さん、何か口ずさんでいたような…確か、故郷の母親が好きだったという、素朴な煮物の作り方でも思い出していたのかしらねえ」
桐の箱…? 平蔵の脳裏に、焼け跡から見つかった、五三の桐紋が彫られた版木が浮かんだ。
【二】
佐嶋忠介の再検分の結果、焼け跡の遺体は、やはり政五郎とお袖ではなかったことが判明した。
一方、木村忠吾は、蛇の目の銀次への執拗な尋問を続けていた。「笹紅」というキーワードをぶつけると、銀次の顔色が一変した。忠吾は、尋問の合間に、こっそり饅頭を頬張っていた。
観念したのか、銀次は重い口を開いた。「…あれは、お袖が持っていたもんだ。政五郎の奴が、妹の形見だとか言っていた…上等な紅で、お袖はそれを大事にしていた。偽小判の色付けなんかに使うわけがねえ。あの女、俺たちを欺くために、わざとそんなことを言っていたのさ…! あの二人、時々、安酒場で酌み交わす酒の肴に、干したエイヒレなんぞを炙って食っていたらしいじゃねえか。そんなつつましい暮らしをしていた奴らが、俺様を裏切るとはな!」
平蔵は、政五郎の過去を知る人物を訪ねた。かつて彼と共に働いていたという老銀簪師は、政五郎のことを「腕は確かだが、不器用なまでに正直な男だった」と語った。老職人は、平蔵に温かい番茶と自家製の梅漬けを振る舞ってくれた。
「政五郎は、妹のおきぬさんのことを心から可愛がっていました。おきぬさんが旗本屋敷で非道な目に遭い、命を絶った時、政五郎は人が変わったように荒れました。おきぬさんは、料理上手で、特に政五郎の好物だった、大根と油揚げの煮物をよく作っていたと聞いています」
お袖が吉原を出た後、丹波屋の若旦那・宗太郎と別れ、政五郎と出会うまでの足取りは、依然として謎に包まれていた。しかし、おまさが粘り強い探索の末、ある事実を突き止めた。お袖は、宗太郎から手切れ金として受け取った五十両を元手に、小さな商いを始めようとしていたらしい。しかし、うまくいかなかった。そんな時、偶然再会したのが、政五郎だったという。二人の間には、いつしか深い情愛が芽生えていたのだろう。お袖は、少ない材料で工夫を凝らし、政五郎のために温かい食事を作った。質素ながらも心のこもった、例えば豆腐と葱だけのシンプルな味噌汁や、鰯の目刺しなどであったろうか。
そして、決定的な手がかりがもたらされた。彦十が、大川の下流にある寂れた船着き場で、政五郎とお袖らしき男女を数日前に見かけたという目撃情報を得たのだ。二人は、粗末な身なりながらも、どこか吹っ切れたような表情で、小さな渡し舟に乗り込み、対岸へ渡っていったという。その時、お袖は懐から小さな握り飯を取り出し、政五郎に勧めていたという。
「対岸には、古寺が一つあるきりです。あるいは、そこに身を潜めているのかもしれません」
平蔵は、少数の手勢を率いて、その古寺へと向かった。寺は、人気のない森閑とした場所に建っており、荒れ果てていた。本堂の隅にある小さな庵(いおり)から、微かに人の気配がする。そして、何かを煮るような、懐かしい醤油の匂いが漂ってくる。
平蔵が静かに声をかけると、中から現れたのは、やはり政五郎とお袖だった。
政五郎はやつれていたが、その目には強い意志の光が宿っていた。お袖は、洗いざらしの着物を纏い、化粧気のない顔は青白かったが、その美しさは変わらない。彼女が平蔵の顔を見た瞬間、その大きな瞳から、はらりはらりと涙がこぼれ落ちた。庵の中からは、大根と油揚げの煮物の香りがしていた。
「…長谷川様」政五郎が、か細い声で言った。
庵の中は質素だったが、清潔に保たれていた。隅には、小さな仏壇が設えられ、一本の白菊と、そして紅を収めた小さな貝の器が供えられていた。おそらく政五郎の妹、おきぬの形見の笹紅なのだろう。そして、小さな土鍋には、くつくつと大根と油揚げが煮えている。おきぬの好物だったという、あの煮物だ。
平蔵は、二人を前に静かに座った。
「…全て、話してもらおうか」
【三】
政五郎は、ぽつりぽつりと語り始めた。妹のおきぬを死に追いやった旗本・神尾主膳への復讐。それが、彼の生きる唯一の目的だった。神尾を社会的に破滅させるための罠を仕掛けることを思いついた。そのために、精巧な偽小判を作り、それを神尾に掴ませて破滅させようと計画したのだ。
しかし、偽小判を作る技術も資金もなかった。そんな時、偶然再会したのがお袖だった。お袖は、政五郎の苦悩と計画を知り、彼を助けることを決意した。彼女は、かつて丹波屋宗太郎から受け取った五十両の小判を政五郎に差し出し、それを元手に偽小判造りが始まった。
「お袖は…私の無謀な計画を止めようともせず、ただ黙って私を支えてくれました。そして、どんな時でも、温かい味噌汁と、心のこもった一品を必ず用意してくれた。それが、どれほど私の支えになったことか…」政五郎の声は震えていた。
お袖は、政五郎が作る金の薄板に、妹の形見の笹紅をわずかに混ぜて塗った。それは、万が一、自分たちが作った偽小判が世に出回ってしまった時、それが自分たちの手によるものだと分かるように、そして、決して悪用するためではないという、ささやかな証を残すためだった。そして、その紅は、政五郎の亡き妹への供養の意味も込められていた。
「あの紅は…おきぬさんの魂の色なのです。この煮物も、おきぬさんがよく作っていたと聞いて、見よう見まねで…」お袖は涙ながらに語った。土鍋からは、出汁の染み込んだ大根の良い香りが立ち上っていた。
しかし、彼らの計画は、蛇の目の銀次一味に嗅ぎつけられてしまう。政五郎とお袖は、銀次の脅迫に屈するふりをしながら、密かに逃亡の準備を進めていた。
近江屋の手代・清吉が持っていた二十両の本物の文政小判。あれは、銀次一味が近江屋から脅し取ろうとしていたものだった。政五郎は、機転を利かせて偽小判とすり替え、本物は桐の版木(それは元々おきぬの遺品である小さな桐箱を細工したものだった)に隠して、火事の直前、お袖が川に流したのだという。
「あの版木は、いつか誰かが見つけてくれることを願って…あの時、懐には、政五郎様のために握った塩むすびが一つだけ…」
長屋の火事は、銀次一味が二人を始末し、証拠を隠滅するために放ったものだった。二人は九死に一生を得て逃げ延び、この古寺に身を隠していたのだ。
「神尾主膳は…?」平蔵が問うた。
「…数ヶ月前、私が仕掛けた罠にかかり、全ての悪事が露見して失脚しました。その後、病で亡くなったと聞いていますが…」政五郎は静かに言った。
全てを聞き終えた平蔵は、しばらく目を閉じていた。庵の中には、大根の煮える音と、二人の静かな嗚咽だけが響いていた。やがて、静かに目を開けると、二人を見据えた。
「政五郎、お袖。お前たちのやったことは、決して許されることではない。しかし…お前たちの心根には、妹を思う情、人を助けようとする心、そして互いを深く思いやる真の愛がある。…その煮物、なかなか良い香りがするな」
平蔵は立ち上がり、懐から一枚の文政小判を取り出した。おまさが例の桐の版木の中から見つけ出した、本物の小判だった。
「これは、清吉が守ろうとしたものだ。そして、お前たちが命懸けで守り抜いたものでもある」平蔵は、その小判を政五郎の手に握らせた。
「この小判を、新しい人生の元手にするがいい。江戸を離れ、どこか遠い土地で、二人で静かに暮らせ。そして、たまには旨いものでも食うのだ。それが、わしからの沙汰だ」
政五郎とお袖は、顔を見合わせ、堰を切ったように泣き崩れた。
平蔵は、黙って土鍋に手を伸ばし、煮えた大根を一つ、口に運んだ。柔らかく煮込まれた大根に、出汁がじんわりと染み込んでいる。素朴だが、心のこもった優しい味だった。
数日後。蛇の目の銀次一味は、火盗改方の厳しい追及の末、全ての悪事が暴かれ、首謀者の銀次をはじめ、一味は残らず捕縛された。丹波屋宗太郎は、自らの罪を悔い、お袖への謝罪の言葉を平蔵に託したという。
夜明け前。大川の渡し場に、粗末な身なりだが、どこか晴れやかな表情の男女の姿があった。政五郎とお袖である。二人の手には、小さな包みと、そして平蔵から渡された一枚の文政小判が固く握られていた。包みの中には、お袖が握った数個の麦飯の握り飯と、少しばかりの香の物が入っている。
「…行くか」政五郎が言うと、お袖はこくりと頷いた。彼女の目には、もう涙はなかった。ただ、愛する男の隣で、静かに微笑んでいる。
小舟が、ゆっくりと岸を離れる。朝靄(あさもや)の向こうに、新しい人生が待っている。二人には、互いを支え合う強い絆と、そして未来を照らす黄金(こがね)の一片があった。そして、お袖が作る温かい料理が、これからも政五郎を支えていくのだろう。
平蔵は、遠くの橋の上から、その姿を静かに見送っていた。彼の心には、一つの事件が終わった安堵感と共に、人の世の哀しみと、それでも失われることのない希望の光を感じていた。そして、ふと、あの庵で食べた大根の煮物の味が蘇り、口元に微かな笑みを浮かべた。
江戸の空が、ゆっくりと白み始めていた。
この文政小判にまつわる一連の出来事は、人々の心に深く刻まれ、「黄金(こがね)の絆、涙河(なみだがわ)の渡し」として、後々まで語り継がれることとなるのであった。ブランドクラブがに出品中のF3924の小判が持つ歴史の重みが、また一つ、新たな物語を紡ぎ出した瞬間であった。
(了)

https://youtu.be/_YL-0y3mtjs?si=-D7JsPShPKUHYe-l

お疲れ様でした。人生とは食べることですw 毎日飲みに行き、旨いうどんや、ミシュランラーメン、日本式の小麦粉カレーみたいに煮込みすぎて、旨いけど栄養が死んでるゴミみたいなものばかり食べてると、僕ちゃんのように糖尿や病気に。そして体調悪いからと寝ながらスマホを一日中見てると、不眠うつになって頭が呆けて認知症みたいになるよ〜新鮮な魚や内臓ホルモンと、朝どれ野菜にスパイス(漢方薬)をかけしっかり食べて元気に昼間自分の好きな活動して余生を楽しみましょう! こちらはあんまり反響なかったら取り消します〜奮ってご入札頂けると嬉しいです〜
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